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幻葬鬼譚 ~神話ヲ殺ス少女タチ~  作者: K. Soma
第七話 異海から来た少女

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81/226

03

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 同日 朝

 /結界封印都市ヒモロギ 通学路

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 

 通学路、と言っても味気ないものである。

 

 寮から高巫(高等巫術学校)まで舗装(ほそう)された道が伸びるのみだ。

 

 道中、面白いものなど何もない。

 

 それもそのはず。何せここ結界封印都市ヒモロギは(はな)から鬼との決戦ありきで設計された都市だ。しかも開発期間が極端に短く、今でも一部では未完成の区域や、鬼との戦いで放棄された拠点も存在する。

 

 ごく少数の娯楽施設を除き、殺風景なのも無理はない。

 

『ヒミコ』

 

 ふと、ハクからの呼びかけ。

 

(ん? なんだよ)

 

『アオのヒトが、くる』

 

(青の人……? 誰だそりゃ)

 

 ハクの白い指を目で追うと、その先にいたのはルリカだった。

 

 確かにルリカの瞳や霊気は青い。どうやらハクはその色で識別しているらしい。

 

「なんだ、気づかれてしまったか。不意打ちの一つでも見舞ってやりたかったのに」

 

「やってみろ。五倍にして返してやる」

 

「はっはっは」快活に笑うルリカ。「冗談だよ冗談。さ、学校へ行こうか」

 

「ざっけんな。アタシにつきまとうんじゃねえ」

 

「知ってるか神越(カミコシ)? キミとこうして一緒にいるだけでな、私の評価はぐんぐん上がるんだぞ。〝嫌われ者の神越にまで優しい凛堂(リンドウ)さんはなんて人格者なのだろう〟とな!」

 

「死ね」すかさず右の拳を打ちこむヒミコ。

 

「甘い」が、(かわ)される。

 

「クソが……っ」

 

 ヒミコは苛立(いらだ)たし()に舌打ちした。

 

 十中八九、本気でやれば勝つのは自分だろう。

 

 が、それは裏を返すと本気でやらねばコイツ(ルリカ)は仕留められぬのと同義。

 

 ルリカもその点は委細承知のようで、最近ではこうしてやたらとウザ絡みしてきた。

 

「ほら、そろそろ人も集まってきている。私の【ぽいんと】を稼ぐために協力してくれ」

 

「死ね」

 

 ヒミコは緋袴(ひばかま)から鋭い蹴りを繰り出すもやはり()けられる。

 

 結局、不本意ながらもルリカと並び歩く形となった。

 

 誰もが認める優等生と不良の組み合わせ。当然、余人の目を引かぬはずがない。

 

 ヒミコは好奇の視線がズサズサと突き刺さってくるのを感じた。

 

「ん……?」

 

 高巫へ入学して早二週間。流石(さすが)にそろそろ知っている顔もチラホラ出てくる。

 

 大抵は目を合わせた途端、気まずそうに顔を(そむ)けられるだけだが……()()()は違った。

 

「えーっと」

 

〝松〟だ。そう〝松〟である。松竹梅の三人娘。

 

 未だ本名は知らない。知る気もない。

 

 その〝松〟が、好奇の視線に(まぎ)れていた。

 

 しかもどういう訳かヒミコと目が合った途端、

 

「う~っ!」

 

 と低く唸り、顔を真っ赤にして去っていく。

 

 怒っている、のだろうか?

 

 その後も三歩に一度はチラッ、チラッとこちらへ振り返りすごい目つきで(にら)んでくる。

 

「なんだありゃ」

 

 ヒミコは訳もわからず呟いた。

 

 一方、ルリカは隣で〝あちゃー〟と額に手を()り天を(あお)ぐ。

 

 明らかに事情を察している者の態度だ。

 

「おい凛堂。どーいうことだ。なんなんだよ、アイツ」

 

「そんなこと言われても、なぁ……」どうにも歯切れの悪いルリカ。

 

「話せ。知っていることを。すべて、だ」

 

「……そもそもは、キミに原因があることじゃないか」

 

「はぁ? アタシに原因? なんの話だよ。アタシが何したってんだよ」

 

「いや、だってキミは……その……したんだろ」ますます言い(よど)むルリカ。

 

「だから。何をだよ」

 

「その……りょ……く……したんだろ」

 

「聞こえねーよ! もっとデカい声で喋れ!」

 

 いい加減ヒミコは腹が立ち、往来のど真ん中も気にせず怒鳴りだす。

 

 ――これが良くなかった。

 

 売り言葉に買い言葉、今度はルリカが大声で言い返す。

 

「 だから! りょ、凌辱(りょうじょく)したんだろっ! 」

 

 道()く女学生たちが一斉に振り返った。

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