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幻葬鬼譚 ~神話ヲ殺ス少女タチ~  作者: K. Soma
第七話 異海から来た少女

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02

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

(五日後)

 (トウ)ノ月、(ケイ)ノ週、(リン)ノ日 早朝

 /結界封印都市ヒモロギ 尾居土(オイツチ)宿舎 食堂

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 

〝ええい、これでもか〟とばかりに山のような朝食が大皿に盛られていた。

 

 見渡す限り脂質と炭水化物の塊である。見てるだけで胸やけしそうな光景だ。

 

 これを、朝からいく。

 

 しかもまだ終わりではない。

 

 ヒミコは瞬く間に〝んぐっんぐっ〟と(たい)らげると、大皿片手に列に並びまたも山盛りを作ってきやがった。

 

 なお、これだけ食べてもヒミコの身体は実に均整の取れたそれである。

 

 これもまた、緋ノ巫女(ゆえ)の特質だ。

 

 むしろこの勢い(ペース)で喰わねば()せる一方である。

 

 ……世間一般の女に聞かれた日にゃあただでは済まない。

 

『ねぇ』

 

 そこで、唐突にハクが現れた。

 

「ぶふぉ⁉」

 

 ヒミコは目を()き口にした飯を噴き出しかける。

 

 無理もない。

 

〝眠いから寝る〟

 

 ハクがそう言い残し姿を消してから、かれこれ二週間近く()っていた。

 

 その間、いくらヒミコが呼びかけても反応はなし。

 

 それが。今になって突然、現れたのである。

 

(てっきりくたばったとばかり思ってたが――)

 

『くたばってないよ』

 

「はぁ⁉」

 

 思わず()頓狂(とんきょう)な声を出すヒミコ。

 

 じろじろと冷たい視線が飛んでくるものの――ギロリ、ヒミコが音が出そうなほど人相悪く()めつけ返すと、すぐさま引っ込んだ。

 

(ど、どうなってんだ……⁉ まさかコイツ、アタシの思考を――)

 

『え? うん、わかるよ。ヒミコの考えてることでしょ』

 

(おいいっ!)

 

『〝おいいっ〟って言った。心の中で。あと、今はおにぎりの具のことちょっと考えてる』

 

 どういうことだ……?

 

 以前のハクは読心などできなかった。

 

 だからこそヒミコは、傍目(はため)にはブツブツと独り言を呟くやべーヤツと承知しつつ、声を出して直接ハクに語りかけていたのである。

 

(いや、でも待てよ……〈アマテラス〉に乗ってた時は違ったな……今みたいに、思うだけで言葉を()わせてた)

 

 それが、こうして〈アマテラス〉の外でもできるようになっている。

 

 これはいったい……何を意味する?

 

『ねぇヒミコ。そんなことよりおなか()いた。たべていい?』

 

(食べるって……何をだよ?)

 

『それ』白く小さな指でヒミコの手にした握り飯を示すハク。『たべたい』

 

(……ほれ)

 

 ヒミコはずいっと差し出した。ハクが食事をするなど、これまた初めてのことである。

 

 途端、パクリ。

 

 パクリ、パクリ、パクリ。

 

 ハクは首だけを動かし握り飯に食いついてきた。まるで水飲み鳥さながらである。

 

(ん――?)

 

『はぁ、おいしかった』

 

 とは言うものの、握り飯に別段変わりはない。

 

 そのままだ。一口たりとて減っちゃいない。

 

(まさか……!)

 

 嫌な予感がしつつ、ヒミコは握り飯を頬張った。

 

(あ、味が――)

 

 しない。

 

 皆無である。

 

 (まご)うことなき(ゼロ)の味だ。

 

 正直、超がつくほどまずい。

 

『ねぇ、もうひとつたべていい?』

 

(……好きにしろ)

 

 ヒミコは過去、()番隊のある任務で空腹の辛さを知っている。

 

 爾来(じらい)、出されたものは絶対に残さないよう自らに()いていた。

 

 だから。

 

 例え二個目の味無しおにぎりでも、しっかりと食べきる。

 

(……うまかったか?)

 

『うん』

 

 ハクは小さく頷いた。

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