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幻葬鬼譚 ~神話ヲ殺ス少女タチ~  作者: K. Soma
第七話 異海から来た少女

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79/226

01

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 (トウ)ノ月、(チュウ)ノ週、()ノ日 正午

 /()ノ国 丸瀬由(マルセユ)沖 第二七海区

  巡洋艦 瑠盆(ルボン)号 甲板(かんぱん)

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 

 異海(イカイ)

 

 大緋(ダイヒ)帝國の本拠列島を取り囲む華海(カカイ)緋海(ヒカイ)のさらに外側に位置する海である。

 

 異海に住む人々にしてみれば大雑把(おおざっぱ)(きわ)まりない定義だ。現に彼らの言語では明確に異海は細分化され、それぞれに歴史と伝統に(もと)づく固有名詞が存在する。

 

 だが。

 

 百三〇年前、()ノ国が第三次異海大戦を制し大緋(ダイヒ)帝國を名乗るようになって以来、そのような歴史と伝統は片隅へと追いやられ、今では一方的に割り振られた無機質な数字だけで管理されていた。

 

 第二七海区。

 

 異ノ国々の一角、()ノ国に隣接したこの青き海もそうだ。(おおやけ)には宗主国(大緋帝國)から植民地(譜ノ国)()()()()()()()領海、という扱いになっている。

 

 譜人(フジン)たちにすればこの上ない屈辱だ。戦後間もなくして頻発(ひんぱつ)した反乱の中には〝このままでは散っていった英霊たちに申し訳が立たぬ〟とする大義を(かか)げた一派もいる。

 

 否――()()

 

 しかしそれらの者もまた、すぐに先祖の霊たちの(もと)へと旅立っている。

 

 大緋帝國の徹底した反乱分子の殲滅(せんめつ)は、狼たちから牙を抜き、従順な愛玩動物(ペット)へと変えるのに十分だった。

 

 (ゆえ)に今では譜ノ国に限らず、異ノ国々のどれをとっても帝國に表立って(こう)する者はまずいない。

 

 彼らにとって、大緋帝國とは力の象徴そのものであり、その最大戦力たる緋ノ巫女は恐怖の権化(ごんげ)に他ならなかった。

 

 ――だから、かもしれない。

 

「……ふぅ」

 

 譜ノ国の有する巡洋艦、瑠盆(ルボン)号。

 

 その甲板(かんぱん)で一人、絵を描く少女を、兵たちは恐々(こわごわ)と遠巻きに見ていた。

 

 バケモノめ――口に出さずとも思いは一つ。そのような視線だ。

 

 彼女には、()()()()()()()()()()()()()()()というのに。

 

「やっぱり………………描けないのね」

 

 少女、方波見(カタバミ)ユイナは空白の帆布(キャンヴァス)物憂(ものう)げな溜息を()きかける。

 

 金糸雀(カナリア)色の瞳は、遠く青き海を見ていた――。

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