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幻葬鬼譚 ~神話ヲ殺ス少女タチ~  作者: K. Soma
第六話 夜ニ浮カブ白キ月

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15

 誰よりも、強く、美しく、そして優しい母だった。

 

 だからこそ、憧れた。

 

 嬉しかった。一緒にいられるだけで。

 

 幸せだった。

 

 ――でも。

 

 ()()()(さかい)に、すべてが変わってしまった。

 

 あの日。

 

 一度として会ったこともなかった祖母の訃報(ふほう)が届き、母が新たな〝月読(ツクヨミ)ノ巫女〟と化した夜。

 

 あの夜も白き月が浮かんでいたのを覚えている。

 

 月の光を受けた母は――()()()()

 

 今の私とさほど変わらぬ三十路(みそじ)から、緋ノ巫女の最盛期(ピーク)とも言われる十代の後半へ。

 

 それだけではない。

 

 母は――いや〝月読ノ巫女〟とは(ことごと)く時間の概念に反した化物だった。

 

 年を取らない。

 

 ()()()()()

 

 より悪質だ。()()()()()()

 

 それも連続した若返りではない。

 

 二年か三年に一度ある日突然、一歳ほど若返る。

 

 最初は気のせいかとも思った。

 

 だが二度目で確信する。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 それからも母の身体は時を(さかのぼ)り続けた。

 

 第二次性徴を逆行し、今では一〇歳に届くか否かの幼さである。

 

 その間〝月読ノ巫女〟がしていたことと言えば二つだけ。

 

 一つ、月を見ること。

 

 二つ、〝お告げ〟を下すこと。

 

 それだけだ。

 

 それだけの、はずだ。

 

 私にはそうとしか言えない。

 

 当然だ。母が〝月読ノ巫女〟となって以来、会えることは滅多(めった)になかったのだから。

 

 それに会ったところで――あの人は私を見てくれない。

 

 いつも、いつまでも、月だけを見詰め続けている。

 

 気づけば私は孤立していた。

 

 父も家を出て、周りには誰もいなかった。

 

 一人ぼっちだった。

 

 だから、かもしれない――。

 

 いつしか私は、()()()()()()()()()()()()()

 

 どこまでも人を見下し、他者を道具としか思わない。思えない。

 

 そんな人間に、なっていた。

 

 正直に言おう。

 

 私は十代の頃、あのシマメとヨウコにすら――()()()()()()()()()()()()()()

 

 そういうものを受け入れる回路が、心の中になかった。

 

 純粋に、損得勘定だけで付き合っていたのである。

 

 あんなによくしてくれた二人なのに……。

 

 あの頃の私は一事が万事その調子だった。

 

 傲慢さに実力が追いついていた、というのが最悪に拍車を掛けていたのかもしれない。

 

 ――だから。

 

 やがて、(むく)いを受けた。

 

 私の経歴(キャリア)における唯一の黒星。

 

 御影坂(ミカゲザカ)連続爆破事件。

 

 (かろ)うじて解決こそしたものの……私は代償に右腕を失った。

 

 永遠に。

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