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機械の鬼は鈍色の拳を握り込み殴りかかってきた。
さほど早くはない。
御幣で受け切った後、反撃に移ることも十分可能だろう。
だが、
(この攻撃……! 何かまずい……!)
ミヅキは長年の戦闘経験からそう判断し〝縮空〟で後ろへ跳ぶ。
展開済みの防御障壁を盾にする形だ。
だが次の瞬間、
「そんな――⁉」
障壁は御札ごと消し飛んだ。
それだけではない。
貫通し拡散した衝撃波が中央管制室内を津波のように呑み込む。
いったい何が起きた……?
――爆発。
そう、爆発だ。
拳が御札に触れた途端、爆発が起きたのである。
とてつもない威力だ。
防御障壁越しでなければ、室内の大半が灰燼と化していたかもしれない。
(なんなのこの鬼は……⁉)
大きさは小型鬼程度、つまり人とさほど変わらない。
だが。
その力は明らかに桁違いだ。
ややもすれば大型鬼すら上回るかもしれない。
「シマメッ!」敵の力量を察したミヅキは即座に決断した。「後を頼むわ!」
霊気を込めた全力の蹴りを鬼へ叩き込む。
これは、攻撃ではない。
純然たる防衛だ。
この中央管制室と、そこにいる仲間を守るための。
鬼は後方へ弾き飛ばされ、そのまま本部の外へ。
ミヅキもすかさず後を追う。
(あれしきで倒せるはずがないわ……! あの子たちではとても太刀打ちできない)
中央管制室付きの巫女たちは皆、純粋な戦闘面では現役から退いている。
無論、それでも常人と比すれば遥かに上回る力を持つが、相手がアレでは分が悪すぎる。
あの場で唯一、対抗し得るのはミヅキだけだった。
「これより私が指揮を引き継ぐ! 各員は持ち場を離れるな! 加勢に行っても無駄死にするだけだぞ!」
後を頼む――シマメはその言葉だけで十全にミヅキの意思を読み取ってくれた。
遠ざかる後方でシマメの指揮が幽かに聞こえる。
「スズ! 第九結界柱の防衛担当から可能な限り戦闘員を呼び寄せろ! ミヅキに合流させるんだ!」
(流石シマメね。こちらがやって欲しいことを全部やってくれるわ。でも………………まいったわね、それまで私が持つかしら)
かなり厳しい戦いになる。
ミヅキはそう思わざるを得なかった。




