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幻葬鬼譚 ~神話ヲ殺ス少女タチ~  作者: K. Soma
第壱話 解き放たれた少女
7/74

07

 次の瞬間、椿(ツバキ)組の面々があらぬ方を向いて驚嘆の声を上げた。

 

 ミヅキもすぐさまそちらを見遣る。

 

 ヒミコだ。どういう訳か鬼の背後を取っている。

 

 だが敵も()る者。即座に振り向き大木(たいぼく)のような巨椀を叩きつける。

 

 しかしヒミコはそこに()()()()()。一瞬の内に空を舞い、鬼の眼前にまで迫っている。

 

「嘘でしょあの子……たった一度見ただけで、()()()()()()()()()()⁉」

 

 熟達者(エキスパート)のミヅキだからこそ、何が起きているかを理解できた。

 

縮空(シュックウ)〟だ。空間を折り畳んで圧縮し跳躍する最難関巫術。

 

 ヒミコはこの短期間でそれを習得し、実戦に用いている。

 

「オラァアアアアッ!」

 

 無論、まだまだ粗削りだ。跳躍の際に霊気が漏れ圧縮空間が露呈(ろてい)している。あれではどこへ跳ぶか一目瞭然なので奇襲には使えまい。

 

 だがそれでも、縮空の本領()る神速機動は十分にこなせている。如何(いか)な大型鬼といえどもあの速さ(スピード)を捉えるのは困難だ。

 

 ならば状況としては五分と五分。

 

 いける、かもしれない――。

 

「ヒャッハァァァアアアアッ!」

 

 すれ違いざまに一閃。ヒミコが(フタ)(ツノ)の一本を斬り落とした。

 

 角は鬼の力の源泉。明らかに敵の動きが鈍る。

 

 その隙をむざむざと見逃すヒミコではない。圧縮空間を立て続けに駆けて跳び、もう一本の角へ御幣(ごへい)を振り下ろす。

 

 だがそこへ、

 

「新手⁉」

 

 最悪の横槍。予期せぬ方角から別の大型鬼が飛び込んできた。

 

 それも二体。

 

「チッ――!」

 

 ミヅキはヒミコが苦々し気に舌打ちしたのを見て取る。仕留め損なったのだ。(すんで)の所で敵の攻撃を(かわ)すだけで精一杯だったのである。

 

 そこから容赦なく浴びせられる追撃の嵐。

 

 ヒミコは神速を駆使し避け続けるが……このままでは体力、霊気共に持つまい。

 

 瞬く間に状況が悪化した。

 

夜代(ヤシロ)司令――!」

 

 突如、椿組の巫女がミヅキに呼びかける。振り返ると新たな顔ぶれが加わっていた。第七結界柱から(サクラ)組の巫女が増援に来てくれたのである。

 

 ありがたい。この戦力なら小型鬼へは問題なく対応できる。

 

 だがそれでもヒミコは――彼女が一手に引き受ける大型鬼三体には――手の打ちようがない。

 

 予備(スペア)の義手があれば加勢することもできたが……現状、隻腕(せきわん)の自分では足手纏いだ。せいぜい時間稼ぎになるか否かだろう。

 

 となれば別の策を打つ必要がある。

 

 ミヅキは一度意識的にゆっくりと息を吐き、現状を脳内で再構築して俯瞰ふかん的視点で観察した。

 

 大型鬼が三体……。これまでにない規模だ。本部でも直前に情報を掴んでいただろう。だからシマメが桜組を手配してくれたのだ。しかしこれだけか? いや、そんなはずはない。本部は大型鬼の出現まで予測していたはずだ。ならばシマメが打ったであろう手は――。

 

 ミヅキは(おもて)を上げた。

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