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幻葬鬼譚 ~神話ヲ殺ス少女タチ~  作者: K. Soma
第六話 夜ニ浮カブ白キ月

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06

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

(現在)

 (トウ)ノ月、(チュウ)ノ週、(ケン)ノ日 夜

 /()(ミヤ)郊外 三曾木(ミソギ)隧道(トンネル)内 第二車道

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 

 一台の車がとてつもない速さ(スピード)隧道(トンネル)内を過ぎゆく。

 

 ミヅキの愛車だ。辻丘(ツジオカ)社の〝紫閃(シセン)〟、それも特注(カスタマイズ)仕様である。

 

 別段急いでいる訳ではない。純粋に、趣味で飛ばしているだけだ。

 

 この時間帯に旧・貴志摩(キシマ)方面へ向かう者はまずいない。ミヅキにとってはいい気晴らしだった。

 

 ――()()()()

 

 そう、最初からすべてがお膳立てされていた不愉快な状況への。

 

(あらかじめ()()()が査問委員会に根回ししていたのね……多分〝(カゲ)〟が動いたのだわ)

 

〝影〟。〝月読(ツクヨミ)ノ巫女〟ハヅキの(めい)にのみ従う直属の部隊。

 

 そういう者たちがいる――否、()()()()()

 

 統括司令官のミヅキですら実際に目にしたことはなく、噂で知るのみである。

 

(それでも……委員会は全員一致ではなかった。一人だけ、しつこく食い下がっていた人がいたわ)

 

 既に足腰が覚束(おぼつか)ぬ小柄な老人。

 

 目だけが鷹のように鋭くギラついた――。

 

金光(カナミツ)ノボル……そう、確かそんな名前だったわね)

 

 あの顔ぶれの中では比較的小物だったので中々思い出せなかった。

 

(帝國学士院(わく)の貴族議員で……ああ、そういえば前から色々とツクヨミ(ウチ)に文句をつけていたわね。たいして影響力のある人ではないから放っておいたけれど……)

 

 記憶に間違いなければ、以前より金光はやれ学術的価値だの意義だのを建前に、鬼に関する記録(データ)の提出を口うるさく求めていた。

 

(そんなことを言われてもね……どうしようもないわ。あの人が決めたことですもの)

 

 何故かわからぬが、ハヅキは鬼に纏わる一切の情報公開を固く禁じていた。

 

 それは如何(いか)なる高官相手でも例外ではない。

 

 政府は鬼について〝そのような敵が存在する〟と報告こそ受けているものの、詳細についてはヒモロギ内で完全に閉じられている。

 

 まるで。

 

 知られたら困るかのように――。

 

(これもわからない話よね……最初は軍事転用を警戒してのことかと思ったけれど……そうじゃないわ。だとしたら、〈ウズメ〉とかにだってもっと厳しい情報制限を課すはずですもの)

 

 だが現実にはそのような制限は存在しない。

 

 むしろ昨今では異ノ国々すらをも巻き込み擬霊(ギレイ)式駆動人形という基盤(プラットフォーム)の更なる改良を進めている。

 

 鬼の存在のみが、異様に伏せられているのだ。

 

(あの金光という議員は何かその辺りの事情を知っているのかしら……? だから鬼の情報を欲している……? 〝影〟の裏工作を()ねつけるほどに……)ミヅキはそこまで考えてから、(……ううん、ちがうわね)そう結論づける。(多分、()()みたいなものなのだわ……悪い意味で)

 

 金光に関して、いくつか思い出したことがある。

 

 あの人物は元々、巫術研(巫術研究所)の理事長を務めていた。帝國学士院の有する議席枠を継承し貴族議員となったのはここ数年の話である。

 

 巫術研。シマメも在籍していた帝國有数の研究所だ。

 

 そのシマメに一度、金光の人物評を聞いたことがある。

 

『自分を賢いと思ってる【たいぷ】の馬鹿さ。相手にするだけ時間の無駄だよ』

 

 とのことだった。

 

(そうそう、それでそこから気に留めないでいたのよね……すっかり忘れていたわ)

 

 シマメは人を見る目に()けている。ミヅキは長い付き合いでそれをよく知っていた。

 

 そのシマメがああも断言する以上、間違いはなかろう。

 

(学士院(わく)の自分が学術面で蚊帳の外なのは気に食わない……多分、動機はそんなところでしょうね)

 

 ああして帝國議員まで(のぼ)り詰めた以上、それなりに政治力はあるのだろう。

 

〝影〟に反発する危険性も一応は理解できているはずだ。

 

(それでも【ぷらいど】が邪魔をして、というところかしら――)

 

 いずれにせよ、大した相手ではない。このまま放置でよいだろう。

 

 目に余るようならいずれ〝影〟が何らかの手を打つはずだ。

 

 ミヅキはそう結論づけ、ほぼ最大速を維持したまま曲がり道(カーヴ)に突入する。

 

 車との心地よい一体感。

 

 遠心力が働き、身体が窓側へと押しやられ――、

 

「……あら?」

 

 と、その時。

 

 ふとミヅキは違和感を覚えた。

 

 ほんの。

 

 ほんの(わず)かだが――車の重心がズレている。

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