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(八日前)
闘ノ月、恩ノ週、俊ノ日 夜
/結界封印都市ヒモロギ
ツクヨミ 対鬼戦闘司令本部
月魅ノ塔 最上階 神託ノ間
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「は……?」
ミヅキは唖然としていた。
月魅ノ塔、神託ノ間。
〝月読ノ巫女〟こと夜代ハヅキが祈りを捧げる神聖な場だ。
ミヅキは昨日の禍ツ忌ノ鬼との戦闘報告でここまで足を運んでいた。
特に、第三結界柱の喪失。この大き過ぎる代償についての詳細と、今後の対応について。
だが、ハヅキから返ってきた言葉は、
『そうですか。わかりました』
たった二言だけだった。
「お、恐れながら〝月読ノ巫女〟さま――」ミヅキは戸惑いを隠し切れずに訊く。「そ、それだけでしょうか?」
「それだけ、とは?」
「報告の通り、第三結界柱はもはや手の施しようがありません。修復・再建ともに不可能です」
「そのようですね」
こんな時ですら、ハヅキは――目の前にいる小さな少女は、夜に浮かぶ白き月だけを見詰めている。
「すべての責任は、私にあります。如何なる処罰をも受け入れる覚悟でございます」
自分のことを、見てくれない――。
「ですが、結果として土禍ツ忌ノ鬼は討たれました」
「土禍ツ忌……?」
第二の禍ツ忌ノ鬼のことだろうか。初めて聞く名である。
だがハヅキはそれには触れず、淡々と続けた。
「すべての禍ツ忌ノ鬼を討つ……それこそが、ツクヨミの使命です。あなたは立派に役目を果たしました」
褒められた……?
いや、違う。そこには感情などまるで籠っていない。
「第三結界柱のことは、仕方のないことです。必要な犠牲だったと割り切りなさい」
「で、ですが来週には査問委員会も控えています。どう申し開きをすれば――」
「ありのままを報告なさい。それで万事うまくゆくでしょう」
ハヅキの言葉はそこで打ち切られた。
これ以上は何も得られまい。経験で熟知しているミヅキは、戸惑いを引き摺ったまま踵を返そうとした。
だがその最中、
(あら――?)
ふと気づく。
(あの彫像………………増えているわ)
右腕が。




