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同日 夕方
/緋ノ宮 八重樹群
帝國議事堂 東通用口
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どうしてだろう。
夏の夕暮れがこうも胸打つのは――。
ミヅキは斜陽に染められた茜色の空を見てそう思う。
(そういえば昔……あの人と一緒に、こんな景色を見たかもしれない)
黄昏時に手を繋いで歩く二人の親子。
自分はまだ、母の腰にすら届かぬほど幼くて、小さな歩幅を精一杯に引き伸ばしている。
そんな自分を、母は優しく微笑みながら見てくれていて――。
(やだわ。いつまで経っても……母離れできないのね、私)
ミヅキは自分に嫌気が差したかのように頭を振る。
そして、強い自制心で無理矢理に思考を切り替えた。
(それにしても、まさかこうもあっさり終わるなんてね……)
本日開かれた第三結界柱喪失の責を問う査問委員会。
ミヅキは被査問者としての出席だった。
当然である。禍ツ忌ノ鬼を倒すためだったとはいえ、それを決定し実行に移したのは他ならぬ自分なのだから。
第三結界柱の喪失――結界柱を一つ作り上げるのにどれだけ膨大な資金と資源が必要かを踏まえれば、ある意味で壊滅的な損害と評しても過言ではない。
故にミヅキとしても相応の覚悟はしていた。
だがその結果は、
(……事実上の〝御咎めなし〟みたいなものだわ)
ミヅキに下された処分のほぼすべては形式的なものだった。実害を被るような懲罰は一切ない。
それどころか、統括司令官の任を解かれることすらなかった。
(一人だけ妙にしつこく食い下がっていた人がいたけれど……それ以外は皆、まるで腫れ物にでも触るみたいだったわ)
ミヅキとて、かつては帝國巫女局長の要職に就いていた身である。
政治の世界の複雑怪奇さは身に染みて知っていた。
ましてやあれほどの面々が揃えば各自の思惑と利害が衝突し、一枚岩になることなどまずあり得ない。
だと言うのに――。
(あの人たちでも……ツクヨミには口出しできないのだわ)
ツクヨミ。
大緋帝國の建国より遥か昔からこの地を、そして今では世界を影から牛耳る秘密組織。
統括司令官として籍を置くミヅキですら、未だその全容を掴み切れていない。
わかっていることはただ一つ。
(あれだけの人たちですら恐れているのだわ……ツクヨミを……いいえ、あの人のことを)
己の母、夜代ハヅキが〝月読ノ巫女〟として頂点に君臨する。
ミヅキは不意に形のいい唇を強く噛んだ。
(結局、私はあの人の手の上で踊らされているということね)
脳裏に数日前の出来事が思い浮かぶ――。




