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幻葬鬼譚 ~神話ヲ殺ス少女タチ~  作者: K. Soma
第六話 夜ニ浮カブ白キ月

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03

 ヒミコに走った衝撃は筆舌に尽くし難い。

 

 それでいて、おそらく一般人にはひどく伝わりにくい衝撃だ。

 

 厳密に言えばヒミコは、ミヅキが結婚していた、出産していた、という事実自体には()()()()()()()()()

 

 ミヅキは器量もよく、また年齢を考えればさほど不思議でもないことだ。

 

 問題の根本は――それでいてミヅキが()()()()()()()()()()()()()()()()、という点にある。

 

「おいおいおいおいおいっ! 嘘だろそれホントかよ⁉」

 

「ん? なんだ聞いてなかったのか、ミヅキから」

 

「聞いてねーよ! てゆーかちょっと待て! アイツ、()()()()()()()()()()、それでいて()()()()()()()⁉」

 

 緋ノ巫女。

 

 ()は〝月ノ神〟より異能の力を授かったとされる女性(にょしょう)たち。

 

 だがこの力。かなり()()()()()を持つのだ。

 

 第一に、何故かはわからぬが〝処女〟と大きく相関する。端的に言えば破瓜(はか)と同時に力がいくらか落ちるのだ。そのため、帝國巫女局では一時期〝貞淑検査〟なる何とも気持ち悪い定期診断が存在したくらいである(現在は廃止済み)。

 

 第二に、出産。これは破瓜(はか)よりもさらにガクッと力が落ちる。一説には、生まれた子供に力が移るためだとか。

 

「で、でもよ――」

 

 ただし、これらの力の喪失は各々(おのおの)で月の物の重い・軽いが違うかの如く、個人依存が非常に強い。極端な例を拾えば無力化にまで至る場合も確かにあるが、中には逆にほんの少しの弱体化で済む者もいる。

 

「――だもんで、アイツの場合はほとんど(おとろ)えてねー。そういうこったろ?」ヒミコは珍しく(なか)狼狽(うろた)えながらシマメに問う。

 

 だが。

 

「はっはっは」シマメは〝最高の冗談を聞いた〟とばかりに笑い飛ばす。「何を言ってるんだヒミコ。()()()()。ミヅキは結婚して、子供が生まれてからというもの、めっきり力が落ちてしまった」

 

「うそ、だろ……?」

 

「嘘なもんか。すごかったんだぞ、全盛期のアイツは」シマメはまるで自身を誇るかのように言う。「今のミヅキじゃ、どんなに多く見積もったってあの頃の四半分(しはんぶん)に届くかどうかだろうなー」

 

「しはん、ぶん……?」

 

 半分の半分。つまり四分の一だ。

 

 ヒミコは目を白黒させてダラダラと冷や汗を流す。

 

 そりゃそうだ。

 

 何せ尾沼崎(オヌマサキ)を脱した際、ヒミコはその四半分の相手にああもしてやられている。

 

「とんでもねえバケモンだな、アイツ……」

 

「ま、伊達や酔狂で史上最年少の壱番隊巫女頭(みこがしら)や帝國巫女局長は務まらない、ということさ」

 

「ふーん」

 

「本当にな………………スゴイ奴だったんだよ。あの頃のミヅキは」

 

 シマメは。

 

 終わりつつある夏の空を見上げ、そう呟いた。

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