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幻葬鬼譚 ~神話ヲ殺ス少女タチ~  作者: K. Soma
第伍話 冷たい血、温かい血

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55/226

10

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 同日 同刻

 /結界封印都市ヒモロギ

  ツクヨミ 対鬼戦闘司令本部 中央管制室

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 

「〝()()()()()()〟……?」初めて聞く言葉にミヅキは眉根を寄せた。「なんの、それはいったい」

 

「言葉通りの意味だよ」シマメが腕を組んで続ける。「具象化の逆……つまり、鬼が人の世に現れ出るのではなく、人が鬼の世に(さら)われる」

 

 ある意味〝鬼隠し〟とでも言うべき現象だな――そう結ぶや否や、シマメは同行してきた技術部官長、根問(ネドイ)カヤに声を掛けた。

 

「どうだ、カヤ? いけそうか」

 

「ああ、なんとかね」上司相手だろうと素っ気なく返すカヤ。彼女に限ったことではない。技術部の人間は往々にしてこういうものだ。「……よし。スズ、これでもう一度、再起動してくれるかい?」

 

「う、うん」カヤとは長い付き合いのスズが()()ずと端末を操作した。

 

 すると。

 

 描影装置(モニタ)が暗転した(のち)、再び実時間(リアル・タイム)で映像が流れだす。

 

 そこに現れたのは、

 

「これって――!」

 

 (マガ)()(オニ)

 

 その右腕。不可視の龍蛇(りょうじゃ)

 

 否――()()()()()()()()()

 

 (つたな)いながらも数十本の線を組み合わせ、仮想描画ができている。

 

「へえ……」カヤがシマメの方を見遣る。「ずばり、アンタの読みが当たったってワケかい」

 

「まあ、そういうことだな」

 

「惜しいねぇ……世界初の逆具象化空間の観測。ここがヒモロギでさえなければ、大々的に発表できたろうに」

 

「しかし、そもそもヒモロギ以外でこれが現れることもまずあるまいよ」

 

「それもそうか」

 

「シマメ――」ミヅキが横から口を挟んだ。「()(つま)んで、教えてくれるかしら?」

 

 これは大きな進展である。専門家ではないミヅキでもわかった。

 

 重要なのは描画そのものではない。

 

 シマメが()()()()()()()()()からこそ、それが可能となった事実だ。

 

「……つまり、その逆具象化空間とやらでは魄子(ハクシ)が重要な役割を担っていると思っていいのね?」手短に説明を受けたミヅキが確認のように聞き返した。

 

流石(さすが)の理解の早さで助かるよ」シマメが頷く。「厳密には非調和因果律との干渉性などの点から少し差異があるが、(おおむ)ねそう思ってくれて構わない」

 

「シマメ、単刀直入に訊くわね。ヒミコとルリカ、二人が生きている見込みはあるかしら?」

 

「〝生きている〟という言葉の定義にもよるが……」シマメが若干目を細める。「少なくとも私は、まだ生存の可能性が高いと考えている」

 

「本当⁉」

 

「ああ、とはいえ時間の問題でもあるな。あの中では(コン)(ハク)に、(ハク)(コン)に逆転している。物質と精神が入れ替わり、肉体と心が置き換わり……()()()()にいる私たちでは、想像も及ばぬ世界だ。そんな中で、おそらく鬼に、具象化前の純粋な(ハク)としての鬼に、何らかの攻撃を受けているはずだ」

 

「となると二人がどこまで持ち(こた)えられるか、ね……」

 

「ああ、そうなる」

 

「二人を助け出せないかしら。案はない?」

 

「一応、あるにはあるんだが……」シマメが歯切れ悪く続ける。「だが駄目だよ、机上の空論に過ぎない」

 

「それでもいいわ。言ってちょうだいシマメ。今は(わら)にも(すが)りたい時なのよ」

 

「そうか? なら言うが――」

 

 真剣な眼差しでシマメの話を聞くミヅキ。

 

「と、いうことなんだ。な? あまりに無謀な案だろう。そもそもどこにもそんな資源はないんだし」

 

「シマメ」

 

 ミヅキは。

 

 目をキラキラと輝かせシマメの手を取る。

 

「あなたって、やっぱり最高よ」

 

 シマメはひどく嫌な予感がした。

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