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幻葬鬼譚 ~神話ヲ殺ス少女タチ~  作者: K. Soma
第伍話 冷たい血、温かい血

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09

「ルリカ」

 

 目を開けると、母がいた。

 

「ルリカ」

 

 それだけではない。父もいた。

 

 何故? どうして?

 

 そもそも、ここはどこ。

 

 白い空間。

 

 果てのない、白一色の空間。

 

 どこまでが近くで、どこからが遠くかすらわからない。

 

 確かなことは一つだけ。

 

 母と父が、いた。

 

 そこにいた。

 

「今までよく頑張ったわね」

 

「でも、もういいんだよ」

 

 何を。

 

 言ってるの。

 

「私たちを許して」

 

 お母さん。

 

「お前に重荷ばかりを押しつけてしまった私たちを」

 

 お父さん。

 

「辛かったでしょう。ずっと、自分を押し殺して生きるのは」

 

「苦しかっただろう。ずっと、誰かの目を気にして生きるのは」

 

 ……うそだ。

 

「でも、もういいのよ。私たちには、あなたがいてくれればそれでいいの」

 

 うそだ、うそだ、うそだ。

 

「ルリカはルリカらしくいてくれれば、それでいいんだ」

 

 うそに決まっている。

 

 わかってる、頭ではわかっているんだ。

 

 それなのに――。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()

 

「いつまでも一緒よ、ルリカ」

 

「いつまでもルリカのことを見ているよ」

 

 ずっと聞きたかったその言葉。

 

 認めて欲しかったのは自分。

 

 いつだって、振り向いて欲しかった。

 

 この人たちに。

 

 だから必要だった。

 

 他人からの賞賛が。

 

 空虚な協調が。

 

「泣かないで、ルリカ」

 

「悲しまないで、ルリカ」

 

 自制の壁が音を立て崩れ始める。

 

 ルリカはただ、泣きじゃくる赤子のようにして二人の腕の中へ。

 

 温かい身体。

 

 温かい鼓動。

 

 温かい――――――――――――――――――()

 

「何してんだてめー。こんなとこで」

 

 次の瞬間、ルリカが目にしたのは首を()ねられた父母の姿だった。

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