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同日 同刻
/結界封印都市ヒモロギ
ツクヨミ 対鬼戦闘司令本部 中央管制室
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「そん、な……!」
ミヅキは崩れ落ちそうになった身体を辛うじて机に留めた。
「だ、第一防衛線、すべて消滅しました……!」スズが健気に職務を遂行する。「〈アマテラス〉、〈ウズメ〉両機の反応ありません」
「ヒミコと、ルリカが――」
死んだ。
信じられない。
信じたくない。
だが。
それでも、知らなければない。
真実を。
「いったい、何が起きたの……?」
「わ、わかりません……ただ、観測記録には非調和因果律の瞬間的な発散傾向が見られます」
「映像は出せるかしら?」
「はい」
巨大描影装置の右端に再び小画面が現れ、コマ送りで記録映像を再生した。
自らが起こした血煙の中で活路を見出し、禍ツ忌ノ鬼へ攻撃を仕掛けた〈アマテラス〉。
手にした御幣が敵を斬り伏せようとしたその刹那――。
「なんてこと!」
急速に巨大化する龍蛇。
まるで口が裂け、身体全体を顎と化した蛇である。
一瞬の内に血煙を虚無に変え、姿を消し、さらには〈アマテラス〉と〈ウズメ〉を周囲一帯ごと呑み込んだ。
後に残るは刳り貫かれたような痕跡を晒す大地のみ。
――その大地から、
「っ⁉ 禍ツ忌ノ鬼、再度出現しました!」
現れ出る鬼の王。
「禍ツ忌ノ鬼、第二防衛線へと向かっています! このままでは楓組と接触します」
「直ちに最終防衛線まで引かせなさい!」
ミヅキは苦悶に顔を顰め、そう指示した。
――だが。
どうする。
引かせたところで、どうしようもない。
あれだけ苦労して作り上げた〈ウズメ〉でさえ、禍ツ忌ノ鬼の前では赤子同然だ。
如何な緋ノ巫女でも、生身の部隊では手も足もでまい。
(このままでは敵が第三結界柱に辿り着くのは時間の問題だわ……!)
ヒモロギに設置された計九つの結界柱。
それらがすべて破壊された時、鬼は外界へと放たれ、人の世に終焉が訪れる。
(最悪の場合、第三結界柱は破棄するしかないわ。自爆装置を作動させれば少しは時間稼ぎになる。でも……)
さりとて、打つ手がない。
禍ツ忌ノ鬼に対抗し得る唯一の術、〈アマテラス〉は失われてしまったのだから――。
「ミヅキ」その時、シマメが中央管制室へと戻ってくる。「すまない、待たせたな」
隣には技術部官長、根問カヤが立っていた。




