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同日 同刻
/結界封印都市ヒモロギ 第三結界柱付近
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天は地に、地は天に。
上下が逆転し霊水に満たされた機胎の中で、ヒミコの目は〈アマテラス〉の目、ヒミコの耳は〈アマテラス〉の耳と化していた。
ややもすると、どちらが真の己かすら疑わしい。
それほどまでに、自我の境界線が揺らいでいる。
(よし……着いた)
あれからすぐに大型昇降機で地下格納庫を出て、第三結界柱へと急行した。
その甲斐あってか、宴の開始には間に合ったらしい。
『鬼門形成予想時刻まであと三分! 〈アマテラス〉は第一防衛線にて禍ツ忌ノ鬼を迎え撃ってください!』
ヒミコの――否、〈アマテラス〉の耳元でスズの声が響く。
通信だ。前回の戦いではなかった機能である。
出撃前に技術官から聞いた話によると、〈アマテラス〉の伝音器官に受信機を直接取りつけたとか。
同様に声帯には送信機が設置され、こちらの声も本部に届く。
「……了解」
ヒミコは手短に承諾の意を伝えた。
好き放題に暴れ回った先の戦いと比べれば、実に殊勝な態度である。
組織に籍を置く限りは命令に従う――それが育ての親、黒麻ヨウコから受け継いだヒミコのけじめであり矜持でもあった。
だが、
(クソ、またか……!)
あくまでそれはヒミコの意思。
腹と胎を鉄索で繋げられ、〈アマテラス〉と人機一体となったこの身体は今、刻一刻と別の意思に染められつつあった。
――自分が自分でなくなる違和感。
だというのに。
不思議とそこに恐怖はない。
あたかも、それこそが本来のあるべき姿だったかのように。
(馴染む……馴染んでいく……アタシの心が、コイツの身体に……)
『 〝なじむ〟って、なに 』
(はぁ⁉)
脈絡もなくヒミコの意識が現実に引きずり下ろされた。
(なんでここにいやがんだてめぇ⁉)
ハクである。
姿形は見えぬが、確かにいる。
ここに、いる。
〈アマテラス〉の中に。
『わからない。きづいたらここにいた。ここはどこ?』
(お、お前なぁ――)
ヒミコが呆気に取られていたその時、
『〈ウズメ〉、第一防衛線に到着!』スズから通信が入る。『鬼門形成が始まりました! 鬼、具象化します!』




