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幻葬鬼譚 ~神話ヲ殺ス少女タチ~  作者: K. Soma
第伍話 冷たい血、温かい血

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47/226

02

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 同日 同刻

 /結界封印都市ヒモロギ

  ツクヨミ 対鬼戦闘司令本部 第一格納庫

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 

 ルリカは〈ウズメ〉の中で待機していた。

 

〈ウズメ〉。

 

〈アマテラス〉を(もと)に造られた擬霊(ギレイ)式駆動人形。

 

 人の技術の限界(ゆえ)に関節や骨格は大きく歪曲(デフォルメ)され、その上を覆う分厚い装甲も相まってか見る者には無骨な印象を与える。

 

 操縦系にも大きな違いがあった。

 

 機胎(キタイ)に入り神秘の神経接続で人機一体と化す〈アマテラス〉とは対照に、細々(こまごま)とした(ボタン)操作棒(レヴァー)が並ぶ〈ウズメ〉の操者席(コックピット)はどこまでも人間文明的だった。

 

「………。………………。………………………。」

 

 暗く狭い箱の中で命令を待つルリカ。

 

 そこへ、

 

『聞こえるかしら、ルリカ』

 

 ミヅキからの()()()通信。

 

 めずらしい。

 

 いつもはスズを介しての連絡なのに。

 

『――ルリカ、聞こえていないの?』

 

「っ、すみません。夜代(ヤシロ)司令。大丈夫です。しっかりと聞こえております」

 

『そう、ならよかったわ。解析官の予測が出たから作戦を伝えるわね』

 

「はいっ」

 

 作戦。

 

 そうだ、頭を切り替えよう。

 

 戦闘だ。

 

 実戦だ。

 

 もう二度と――あのような無様な醜態を晒せない。

 

『今すぐ第三結界柱へ向かってちょうだい。九分後に鬼門(キモン)形成の予測よ』

 

「了解です」

 

 ルリカはすぐさま〈ウズメ〉を格納庫から出し現地へと向かわせた。

 

 九分あればなんとか間に合うだろう。

 

『予測規模は小型鬼が六〇、大型鬼が四……そして(マガ)()(オニ)が一となっているわ』

 

「例の〝()(ツノ)〟ですね?」

 

『……ええ、そうよ』

 

 負けられない……。

 

 今度こそ、勝つ。

 

(でなければ、でなければ私は――)

 

『でも、あなたの担当は禍ツ忌ノ鬼ではないわ。大型鬼よ』

 

「そんな――⁉」

 

『いい? よく聞いてルリカ』ミヅキが通信越しに一拍置いてから言う。『あなたは間違いなく、優秀よ。とっても優秀な巫女よ。これまで私が見てきた中でも五本の指に入るわ』

 

 その言葉は。

 

 平時であればどれだけうれしいものだったろう。

 

 けれども、今は――。

 

『だからこそ、あなたには自分の役割をまっとうして欲しいのよ。残念だけれど、今のところ禍ツ忌ノ鬼には〈アマテラス〉でないと歯が立たないわ……』

 

〈アマテラス〉。

 

〈アマテラス〉、〈アマテラス〉、〈アマテラス〉。

 

 自分を拒んだのに――()()()は受けいれた、あの機体。

 

 機械仕掛けの巫女。

 

『禍ツ忌ノ鬼がいる限り、周辺の鬼は無限に〝黄泉返(ヨミガエ)リ〟を続ける。小型鬼だけではなく、四体の大型鬼もね……。それを抑え込めるのはあなたと、あなたの繰る〈ウズメ〉だけなのよ。だから……わかってくれるわよね、ルリカ?』

 

「は、い……!」ルリカは(かろ)うじて応える。「大丈夫です。私は、自分の役割をまっとうします」

 

 二番目の役割を。

 

『それを聞けてよかったわ。あなた用の新装備も間に合ったということだし、期待しているわよ。がんばってね、ルリカ』

 

 そこで通信が切れた。

 

(がんばる……?)

 

 言われなくとも、自分はいつだってがんばっている。

 

 がんばって、いるのだ。

 

(なのに――!)

 

 操作棒(レヴァー)を握るルリカの指先が、雪のように白く染まった。

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