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幻葬鬼譚 ~神話ヲ殺ス少女タチ~  作者: K. Soma
第肆話 不和と調和

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44/155

09

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 同日 同刻

 /結界封印都市ヒモロギ

  ツクヨミ 対鬼戦闘司令本部

  月魅(ツキミ)ノ塔 螺旋階段

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 

 ミヅキは大層気が進まなかった。

 

 こんな時間での急な呼び出し。

 

 ろくな用件でないのは明らかである。

 

 ()()()はいつだってそうだ。

 

 こっちの事情などまるでお構いなしに――。

 

「……不満が顔に出ているぞ、ミヅキ」

 

 隣りで一緒に階段を上るシマメが苦笑を漏らす。

 

「いいじゃない。あなたの前でくらい、正直になったって」

 

「友人冥利に尽きる言葉だな」シマメは息を切らしつつ言った。「それより、もう少し速度を落としてくれないか。お前と違って私はもうだいぶガタが来ているんだ」

 

「あ、ごめんなさい」

 

 多少、歩を緩めるミヅキ。

 

 それでも延々と続く螺旋階段を上る二人の足並みは、常人から見ればほとんど全力疾走並の速さだった。

 

「……ここに昇降機を設置しなかったのは、ツクヨミ最大の悪手だと思うよ」

 

「まったくね。一日中部屋籠りっぱなしのあの人はいいだろうけど、こうして足(しげ)く通わされる身にもなって欲しいわ」

 

「〝すまじきものは宮仕(みやづか)え〟だな」

 

 そのまま上り続け、二人はようやく最上階に辿り着いた。

 

「……失礼します」 

 

 ミヅキが扉を開け、神託ノ間へと入る。

 

 先までと異なり、その顔からは如何なる表情も窺えない。

 

 後にシマメも続いた。

 

(あら――?)

 

 月明りしか()さぬ暗がりの中、ふとミヅキの目が()()()()()のを捉える。

 

(左腕の……彫像? 前に来た時はあんなのなかったけれど……)

 

 気になる。なんだろう。アレは。

 

 訊いてみようか――そう思ったのも(つか)の間、ミヅキはすぐさまその考えを頭から追いやる。

 

(無駄ね。どうせ訊いたって答えてくれるはずないわ……あの人から何も言わないのだったら)

 

 実際、ミヅキの予想通りだった。

 

 ハヅキは例によって例の如く、座したまま月だけを見詰め続け、こちらには一瞥(いちべつ)もくれぬまま、彫像には一切触れずに語り出す。

 

「……鬼が来ます。第二の鬼が……(マガ)()(オニ)が」

 

 ただちに迎え撃ちなさい――〝お告げ〟はそれで締め括られた。

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