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同日 夜
/結界封印都市ヒモロギ
ツクヨミ 対鬼戦闘司令本部
月魅ノ塔 最上階 神託ノ間
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一心不乱とはまさしくこの少女を表すための言葉である。
少女。紫色の瞳の少女。
夜代ハヅキ。
月読ノ巫女。
今宵も石の如く微動だにせず、座したまま白き月だけを見詰めている。
「………。………………。………………………。」
ハヅキは四六時中、ここ神託ノ間で祈りを捧げていた。
最早、この部屋自体がハヅキの血肉の一部と評しても過言ではない。
だというのに、室内は殺風景だった。
そこには最低限の生活の匂いすらない。
それもそのはず。
ハヅキの身体は今や、生きるための糧や一時の休息すら必要としないのだから。
「若禍ツ忌ノ鬼」
ふと。
ハヅキの視線が天から降りた。
「第一の鬼」
紫の瞳が映すは――奇妙な彫像。
そう、とても奇妙な彫像であった。
いったい素材に何を使えば斯様にも白く滑らかな面を彫り出せるのだろうか。
その上、
「浄化されし左腕」
それは腕、左腕だけの彫像だ。
月明りしか射さぬ暗闇の中、その左腕はまるで宙に浮いているかのようである。
「なれば次に現れしは……土禍ツ忌ノ鬼」
ハヅキがおもむろに立ち上がった。




