表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻葬鬼譚 ~神話ヲ殺ス少女タチ~  作者: K. Soma
第肆話 不和と調和

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/157

02

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 (トウ)ノ月、(オン)ノ週、(リン)ノ日 未明

 /結界封印都市ヒモロギ

  平越(ヒラコシ)宿舎 三号棟 四階 四〇七室

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 

 ルリカは目を覚ました。

 

 呼吸が荒い。落ち着かない。身体が寝汗でびっしょり濡れている。気持ち悪い。

 

 ルリカは目を見開いたまま自分の肩を抱き、震えが収まるのを待つ。

 

 しばらくしてようやく、枕元の時計に手を遣った。

 

 背面のつまみを引き、鳴りもしてない目覚ましを切る。

 

 ――短針。

 

 時計の短針がいつもよりずっと上にいた。

 

 (とばり)を開けずともわかる。まだ夜も明けてない時間のはずだ。

 

 いつもより、ずっとはやい。

 

 ()()()()()()()、不規則に目が覚めてしまう。

 

神越(カミコシ)に……負けて、から……)

 

 既に三日が()っていた。

 

(寝よう……寝よう、寝よう……!)

 

 この三日間、ルリカはまったく同じ努力を試みている。

 

 もう一度寝て、いつもの時間に目を覚まそうとする努力。

 

 あたかもそれは〝大丈夫だ、問題ない〟と自分に言い聞かせ、暗示をかけるかのようだ。

 

 だが往々にして暗示というものは意識した途端、春の夜の夢の如く散ってゆく。

 

 ルリカの場合も例外ではなかった。

 

 むしろそれがきっかけとなり、心の奥底に隠したはずのいやらしいモノが鎌首(かまくび)をもたげだす。

 

 ――自分から挑みに行ったようなものなのに。

 

(ちがう……!)

 

 ――あんなヤツより自分の方が優れてる。そう証明したかったんだよね。

 

(ちがう、ちがう……!)

 

 ――でも、負けちゃった。

 

(ちがう、ちがう、ちがう、ちがう、ちがう……!)

 

 ――もう、

   

   誰も見てくれないね。

   

   私のこと。

 

「やめてくれっ!」

 

 ルリカは再び目を開き時計を見る。

 

 夜明けは遠かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ