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闘ノ月、恩ノ週、倫ノ日 未明
/結界封印都市ヒモロギ
平越宿舎 三号棟 四階 四〇七室
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ルリカは目を覚ました。
呼吸が荒い。落ち着かない。身体が寝汗でびっしょり濡れている。気持ち悪い。
ルリカは目を見開いたまま自分の肩を抱き、震えが収まるのを待つ。
しばらくしてようやく、枕元の時計に手を遣った。
背面のつまみを引き、鳴りもしてない目覚ましを切る。
――短針。
時計の短針がいつもよりずっと上にいた。
帳を開けずともわかる。まだ夜も明けてない時間のはずだ。
いつもより、ずっとはやい。
あれからずっと、不規則に目が覚めてしまう。
(神越に……負けて、から……)
既に三日が経っていた。
(寝よう……寝よう、寝よう……!)
この三日間、ルリカはまったく同じ努力を試みている。
もう一度寝て、いつもの時間に目を覚まそうとする努力。
あたかもそれは〝大丈夫だ、問題ない〟と自分に言い聞かせ、暗示をかけるかのようだ。
だが往々にして暗示というものは意識した途端、春の夜の夢の如く散ってゆく。
ルリカの場合も例外ではなかった。
むしろそれがきっかけとなり、心の奥底に隠したはずのいやらしいモノが鎌首をもたげだす。
――自分から挑みに行ったようなものなのに。
(ちがう……!)
――あんなヤツより自分の方が優れてる。そう証明したかったんだよね。
(ちがう、ちがう……!)
――でも、負けちゃった。
(ちがう、ちがう、ちがう、ちがう、ちがう……!)
――もう、
誰も見てくれないね。
私のこと。
「やめてくれっ!」
ルリカは再び目を開き時計を見る。
夜明けは遠かった。




