表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻葬鬼譚 ~神話ヲ殺ス少女タチ~  作者: K. Soma
第参話 ヒトのナカ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/150

08

 (さか)りを過ぎたとはいえ(トウ)ノ月は季節としては夏である。

 

 暑い。

 

 それだけではない。

 

 (まぶ)しい。

 

 長年監獄で日陰者をしてきたヒミコにとっては、ほとんど殺人的な陽射(ひざ)しの強さだった。

 

「あちー……」

 

 だからこうして木陰(こかげ)で休んでいる。

 

 ここは汎用演習場。

 

 高巫(高等巫術学校)では午前と午後のはじめに全学年合同の訓練が課されている。

 

 午前中は集団戦を想定した連携演習だったが、午後からは個人戦に重きを置くようで、平たく言えば組手(くみて)のような一対一形式の模擬戦闘が実施されていた。

 

〝妙な所で生真面目〟なヒミコとしては当然参加せざるを得なかったものの、最低限の達成基準(ノルマ)に届くや否や早々に切り上げ、こうして休憩に入ったのである。

 

(……まあ、確かにそこそこ腕は立つよな。どいつもこいつも)

 

 流石(さすが)最高水準ベスト・オヴ・ザ・ベスト(かか)げるだけはある。

 

 誰を見ても平均的な帝國巫女より上をゆくと思われた。

 

 だが、

 

(でもなぁ……だからと言ってアタシとやるには……ちょっとキツイよなぁ)

 

 というのが正直な感想である。

 

 これは決して自惚(うぬぼ)れではない。

 

 率直(そっちょく)に言って、ヒミコと彼女たちでは潜り抜けた死線の数が違う。

 

 それも桁違いに。

 

 その違いがそのまま実力の差に直結していた。

 

 実際、先の模擬戦でもヒミコは苦も無く全勝している。

 

(まあ、中には面白そうなのもいるけど……)

 

 ヒミコは今なお模擬戦に励む青い瞳の少女を見た。

 

「ねぇ、ちょっとアンタ――」

 

「あ?」

 

 とその時。不意に声を掛けられ振り向く。

 

 腕を組んだ女子が三人。こちらを見下ろしている。

 

 何やらどことなく――不機嫌そうだ。

 

「新入りのくせに何もう休んでんの? やめてくんない、そういうの。こっちのやる気まで下がるから」

 

 訂正。間違いなく不機嫌だ。

 

 かてて加えて、めんどくさそうでもある。

 

「……んなのアタシの勝手だろーが。こっちはもうやることきっちり済ませてんだよ」

 

 ギロリと音がしそうなほど人相悪く()めつけるヒミコは。

 

 若干、女子三人は怖気(おじけ)づく。

 

 だが、

 

「つーか誰だお前ら」

 

 ヒミコの()()で一挙に再燃した。

 

「はぁ⁉ 信じらんない!」

「何様のつもりなんだよアンタ!」

「さっきわたしたち全員とやったじゃない!」

 

 ……? 全員とやった? 何をだ。

 

 あ、模擬戦か。

 

 そういえばこの三人と順々に戦った……気がする。

 

 一〇人を相手にしたのでイマイチ記憶が定かでないが。

 

「………。………………。………………………。」

 

 ヒミコが若干の気まずさを覚え黙していると、三人はことさら自尊心(プライド)を傷つけられたらしく、

 

「へ、へぇー。そう。アタシらのことなんて、これっぽっちも覚えてないってワケ……!」

 

 まず中央の少女が噛みついてきた。

 

 刺々しい態度である。

 

 とりあえずコイツは〝松〟で認識しよう――ヒミコは心の内でそう決めた。

 

「ホント、ありえないよねコイツ。なんなの。デカイ態度して」

「ふざけてるよね。わたしたちのことを見下してるとしか思えないよ」

 

 なら右と左は〝竹〟と〝梅〟でいいか。

 

「……で? だからなんなんだよお前ら。アタシに用でもあんのか?」

 

 そこから先は売り言葉に買い言葉。

 

 悪いことに松竹梅の三人娘は女子としてはかなりの腕利きで、それすなわち欠陥品(ポンコツ)のヒミコとは天と地の差である。いつの間にやらその他大勢の女子を巻き込んできた上、非はヒミコにあるとする論調を言葉巧みに展開していた。

 

 で。

 

 そうこうしている内に、気づいた時には――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ