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幻葬鬼譚 ~神話ヲ殺ス少女タチ~  作者: K. Soma
第参話 ヒトのナカ

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26/226

02

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 同日 朝

 /結界封印都市ヒモロギ

  高等巫術学校 北校舎 一階 一〇一教室

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 

 なんだか無理のある光景だった。

 

 なにせ他ならぬヒミコ自身ひしひしとそう感じている。

 

 先ほどから彼女の腹の中ではぐつぐつと不満が音を立て()いていた。

 

 見ようによってはなるほど〝清楚な姿〟と言えるかもしれない。

 

 何せおろしたての巫女装束だ。(まばゆ)いばかりにピッカピカである。その筋の者でなくともある種の神聖さや(おごそ)かさに姿勢を正さずにはいられない。

 

 でも。

 

 何故だがヒミコには不思議とそれが似合わぬのだ。

 

 まるで牢獄に閉じ込められた凶悪犯が嫁入り衣装を着ている、みたいな不気味さなのである。

 

馬子(まご)にも衣装〟という言葉への生きた反証みたいな女だった。

 

「……っ」

 

 ヒミコが気に食わぬのはそれだけではない。まだまだある。

 

 この刺繍(ししゅう)。見るからに月神(ツキガミ)教関連のそれ。

 

 反吐(へど)が出る。帰ったら絶対に外そう。ヒミコは固く決意する。

 

 あろうことかこの女、巫女のくせに信心の欠片も持ち合わせちゃいなかった。

 

「……っ、……っ」

 

 大変残念なことにヒミコは女子として欠陥品(ポンコツ)である。

 

 思ったことがすぐ顔に出る上、嘘笑いが下手だ。

 

 つい先ほど、()()()()を終えてから()()に〝表情が硬いよ。ほら、笑って笑って〟などと言われたのもあって、もー顔面はぐちゃぐちゃである。

 

 笑顔、というより表情筋が政権転覆(クー・デ・タ)でも起こしたみたいだった。

 

「……っ、……っ、……っ」

 

 びっくんびっくんびくびくびっくん‼

 

 暴動水準(レヴェル)で荒ぶる眼輪筋(がんりんきん)

 

 だというのに口は毒薬でも突っ込まれたかのように半開きである。それでも一応、形だけを見れば三日月を転がしたように口角が上がっていた。わずかな、本当にごくわずかな涙ぐましい努力の痕跡が見て取れる。

 

 でもダメだ。やっぱりダメだ。努力は水平線の遥か彼方(かなた)で水泡に消ゆ。

 

 だってどー見たって目がケダモノだ。血に飢え肉を求め彷徨(さまよ)う野生のソレだもの。

 

「~~~~~~~~っ!」

 

 ――結果として。

 

 ()()()にはムダに緊迫感(サスペンス)が満ち溢れていた。

 

 ()()()の全員が口に出さずとも思いは一つ。

 

〝なんかやべーヤツがきた〟

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