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同日 朝
/結界封印都市ヒモロギ
高等巫術学校 北校舎 一階 一〇一教室
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なんだか無理のある光景だった。
なにせ他ならぬヒミコ自身ひしひしとそう感じている。
先ほどから彼女の腹の中ではぐつぐつと不満が音を立て沸いていた。
見ようによってはなるほど〝清楚な姿〟と言えるかもしれない。
何せおろしたての巫女装束だ。眩いばかりにピッカピカである。その筋の者でなくともある種の神聖さや厳かさに姿勢を正さずにはいられない。
でも。
何故だがヒミコには不思議とそれが似合わぬのだ。
まるで牢獄に閉じ込められた凶悪犯が嫁入り衣装を着ている、みたいな不気味さなのである。
〝馬子にも衣装〟という言葉への生きた反証みたいな女だった。
「……っ」
ヒミコが気に食わぬのはそれだけではない。まだまだある。
この刺繍。見るからに月神教関連のそれ。
反吐が出る。帰ったら絶対に外そう。ヒミコは固く決意する。
あろうことかこの女、巫女のくせに信心の欠片も持ち合わせちゃいなかった。
「……っ、……っ」
大変残念なことにヒミコは女子として欠陥品である。
思ったことがすぐ顔に出る上、嘘笑いが下手だ。
つい先ほど、自己紹介を終えてから担任に〝表情が硬いよ。ほら、笑って笑って〟などと言われたのもあって、もー顔面はぐちゃぐちゃである。
笑顔、というより表情筋が政権転覆でも起こしたみたいだった。
「……っ、……っ、……っ」
びっくんびっくんびくびくびっくん‼
暴動水準で荒ぶる眼輪筋。
だというのに口は毒薬でも突っ込まれたかのように半開きである。それでも一応、形だけを見れば三日月を転がしたように口角が上がっていた。わずかな、本当にごくわずかな涙ぐましい努力の痕跡が見て取れる。
でもダメだ。やっぱりダメだ。努力は水平線の遥か彼方で水泡に消ゆ。
だってどー見たって目がケダモノだ。血に飢え肉を求め彷徨う野生のソレだもの。
「~~~~~~~~っ!」
――結果として。
教室内にはムダに緊迫感が満ち溢れていた。
同級生の全員が口に出さずとも思いは一つ。
〝なんかやべーヤツがきた〟




