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幻葬鬼譚 ~神話ヲ殺ス少女タチ~  作者: K. Soma
第参話 ヒトのナカ

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25/153

01

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 (トウ)ノ月、(オン)ノ週、()ノ日 早朝

 /結界封印都市ヒモロギ

  平越(ヒラコシ)宿舎 三号棟 四階 四〇七室

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 

 凛堂(リンドウ)ルリカは目を覚ますと同時に枕元の時計に手を遣った。

 

 そのまま背面のつまみを引き、まだ鳴りもしてない目覚ましを切る。

 

 毎朝この調子だ。

 

 ルリカには物心ついた時からこの(かた)、誰かに起こされたという記憶がない。いつも自然に目が覚める。

 

〝春眠暁を覚えず〟などとよく聞くが、まったく同意できない。

 

 春でも夏でも秋でも冬でも、彼女の目蓋(まぶた)は決まった時間になれば必ず、酒蒸しにされた蛤仔(アサリ)の如くパッチリと開くのだ。

 

 ではそんなルリカが何故、毎晩律儀に発条(ゼンマイ)を巻いて目覚ましを設定(セット)しているかというと、その答えは単純。

 

 人からの贈り物(プレゼント)だからだ。

 

 貰った以上は、使わねば申し訳が立たない。

 

 例えそれが無用の長物でも。

 

(……時計としてはちゃんと役に立ってるし、【でざいん】だって可愛くて好きだ。だから、問題ない)

 

 どこか気まずげな顔をして自分に言い聞かせる。そこまで含めてが彼女の朝の習慣モーニング・ルーティンだった。

 

(もう、外して大丈夫だな)

 

 寝巻を脱いだルリカが均整の取れた肢体(したい)に巻きついていた包帯を(ほど)く。しなやかで適度に筋肉のついた身体。やや色素の抜けた傷跡が目に()まる以外は至って健康そのものだ。

 

 二週間前、()()()()()()()()()()()とは到底思えない。

 

 常軌を逸した回復力。これもまた緋ノ巫女の特徴の一つであった。

 

(次は負けない……。負けたくない……っ!)

 

 姿見(すがたみ)に映った己自身を()めつけるルリカ。

 

 その青い瞳に焼きつき離れぬのは……(マガ)()(オニ)

 

 自分に与えられた機体(〈ウズメ〉)を瞬く間に大破せしめた憎き鬼。

 

 ――そして。

 

 その鬼を討った〈アマテラス〉。

 

 機械仕掛けの巫女。

 

(……もう行こう)

 

 ルリカはツクヨミから配給された巫女装束に袖を通す。

 

 帝國巫女のそれとはかなり異なる意匠(いしょう)だ。分類上では同じ白衣(びゃくえ)緋袴(ひばかま)だが、帯や袖、裾などの方々(ほうぼう)に細かな違いが散見する。

 

 その上、ツクヨミの巫女装束には満月とそこから降り立つ橋の刺繍(ししゅう)が入っていた。

 

 まるで、彼女らの崇める神を地上へと(いざな)うかのように――。

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