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幻葬鬼譚 ~神話ヲ殺ス少女タチ~  作者: K. Soma
第拾参話 貫く意志

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225/226

26

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 同日 未明

 /結界封印都市ヒモロギ 第五結界柱跡地付近

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 

(終わった……)

 

〈ウズメ改〉は矢を放った姿のままで硬直していた。

 

 機体の中でルリカは(なか)ば茫然と描影装置(モニタ)の映像を眺めている。

 

(暑い……蒸すな、この中は……)

 

 気づけば身体が汗でビショ濡れだった。じっとりと重くなった巫女装束が肌に(まと)わりつき(わずら)わしい。

 

()()()()――)

 

 何故だか記憶が過去へと(さかのぼ)る。

 

(ああ、そうか……)

 

 ルリカは不思議な納得を覚えた。

 

 この疲労感と達成感。

 

 ()も、そうだった。

 

 尋常小学校に入って以来、途端に厳しくなった母。

 

 でも、その母が年に一度か二度、頑張った自分へのご褒美として連れて行ってくれた場所。

 

 それこそが〝テング屋敷〟である。

 

 だからあの場所は、自分にとって特別だった。

 

『私とて、娘の成長を受け入れられぬほど狭量(きょうりょう)ではありません』

 

 ふとその言葉が思い起こされる。

 

()()()()は、私を人形としてなんか見ていなかった……いつだって、ちゃんと私を見てくれていた……)

 

 理屈でもなく、論理でもなく、感情が――心がそう受け止めていた。

 

 ルリカが心地の良いあたたかさに(ひた)っていたその時、

 

『……おい凛堂(リンドウ)』不意にヒミコからの通信。『こっから出られねえ。なんとかしてくれ』

 

 見れば〈アマテラス〉は盛大に転倒していた。ちょうど腹ばいになるような形で。

 

 いや、それだけではない。多分あちらも本当にギリギリだったのだろう、四肢の大半が溶解していた。

 

 あれでは自力で起き上がるのは難しいし、機体からの脱出も無理だろう。

 

「……ふふん、」ルリカは少し遅れて通信を返した。「これで借りがまた一つ――いや二つ増えたな」

 

『……だいたい、お前がもっと早く戻ってきてくれりゃあ、』

 

 何やらブツブツ言いかけるヒミコ。だがルリカはすかさず畳みかける。

 

「お、なんだ? ソレが人にモノを頼む時の態度なのか? 随分と変わってるな」

 

『……はいはい、悪かったよ。助けてくれて感謝してる。だからついでに……もう少し手を貸してくれ』

 

 そこからのルリカはすごかった。

 

〝むふふ〟と〝えへへ〟の重ね合わせで、引っ切りなしに喋り続ける。

 

 そうしていつまでも、晴れ渡った青空のような笑顔を浮かべていた。

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