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幻葬鬼譚 ~神話ヲ殺ス少女タチ~  作者: K. Soma
第拾参話 貫く意志

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224/226

25

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 同日 同刻

 /結界封印都市ヒモロギ

  ツクヨミ 対鬼戦闘司令本部 中央管制室

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 

(お願い、ルリカ……!)

 

 ミヅキは(すが)る思いで前面の巨大描影装置(モニタ)を見詰めていた。

 

 そこには今、遠く離れた鬼へ向け、己の全長をも上回る巨大な弓を構えた〈ウズメ改〉の姿が映し出されている。

 

 異ノ国々の技術力を取り入れ新たに生まれ変わった〈ウズメ〉。

 

 当然、その射撃性能は(いちじる)しく向上している。

 

〈ウズメ〉の巨体化に伴う出力向上は、弓の張力にそのまま直結していた。霊気伝導や感知器(センサ)の効率は以前と比べ物にならず、高い精密性を保証している。

 

 だがそれでも最後は。

 

 操者の()る、ただその一撃にすべてが(たく)される。

 

(あの距離なら鬼の〝(アマ)玉垣(タマガキ)〟は中和されているわ……!)

 

 今の〈ウズメ改〉の出力なら、必ずや討ち取れるはずだ。

 

 ただし、それにはこの気の遠くなるような距離を挟む狙撃を成功させねばならない。

 

(ルリカ……!)

 

〈ウズメ改〉が矢を(つが)え、そして大きく弓を引いた。

 

 力強く、それでいて一分(いちぶ)の乱れもない正確な動き。

 

『いいぞ神越(カミコシ)。あと一〇秒だけ耐えてくれ』

 

 ルリカがヒミコへと向けた通信がこちらにも届いた。

 

 一〇秒。

 

 かつてこれほど長いと感じた一〇秒があっただろうか。

 

 描影装置(モニタ)の片隅には別枠で遠方から捉えた〈アマテラス〉の様子も映し出されている。

 

 途方もない――まるで湖か海のような――粘液に呑まれた機械仕掛けの巫女。

 

 その少し先には木乃伊(ミイラ)の身体と龍蛇(りょうじゃ)の首を(さら)した鬼がいて、体表を覆う粘液が少しずつ減少し本体が露出していく。

 

 好機(チャンス)

 

 だが、と同時に――狙撃の難度が()()()()

 

〈アマテラス〉へ向けだくだくと粘液を吐き続ける龍蛇。その反動で、本体の鬼が――特にその急所たる〝()(ツノ)〟が無秩序に震えだしたのである。

 

『………。………………。………………………。』

 

 だがそれでもルリカは、〈ウズメ改〉はまるで動じなかった。

 

 引いた弓を固定し、時間に対し静的(スタティック)を保ち、機械の算出した計測値と――そして何より、己が積み上げた経験を信じ敵の動きを読む。

 

 無秩序の中の、隠れた秩序を見つけ出す――。

 

『――!』

 

 瞬間、〈ウズメ改〉が矢を放った。

 

 描かれたその軌道。矢が進む未来。

 

 それは寸分違うことなく、ルリカの貫く意志を反映していて――

 

「やった!」

 

 見事、鬼の〝()(ツノ)〟を射貫(いぬ)いてみせた。

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