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同日 同刻
/結界封印都市ヒモロギ
ツクヨミ 対鬼戦闘司令本部 中央管制室
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(お願い、ルリカ……!)
ミヅキは縋る思いで前面の巨大描影装置を見詰めていた。
そこには今、遠く離れた鬼へ向け、己の全長をも上回る巨大な弓を構えた〈ウズメ改〉の姿が映し出されている。
異ノ国々の技術力を取り入れ新たに生まれ変わった〈ウズメ〉。
当然、その射撃性能は著しく向上している。
〈ウズメ〉の巨体化に伴う出力向上は、弓の張力にそのまま直結していた。霊気伝導や感知器の効率は以前と比べ物にならず、高い精密性を保証している。
だがそれでも最後は。
操者の射る、ただその一撃にすべてが託される。
(あの距離なら鬼の〝天ツ玉垣〟は中和されているわ……!)
今の〈ウズメ改〉の出力なら、必ずや討ち取れるはずだ。
ただし、それにはこの気の遠くなるような距離を挟む狙撃を成功させねばならない。
(ルリカ……!)
〈ウズメ改〉が矢を番え、そして大きく弓を引いた。
力強く、それでいて一分の乱れもない正確な動き。
『いいぞ神越。あと一〇秒だけ耐えてくれ』
ルリカがヒミコへと向けた通信がこちらにも届いた。
一〇秒。
かつてこれほど長いと感じた一〇秒があっただろうか。
描影装置の片隅には別枠で遠方から捉えた〈アマテラス〉の様子も映し出されている。
途方もない――まるで湖か海のような――粘液に呑まれた機械仕掛けの巫女。
その少し先には木乃伊の身体と龍蛇の首を晒した鬼がいて、体表を覆う粘液が少しずつ減少し本体が露出していく。
好機。
だが、と同時に――狙撃の難度が高まった。
〈アマテラス〉へ向けだくだくと粘液を吐き続ける龍蛇。その反動で、本体の鬼が――特にその急所たる〝三ツ角〟が無秩序に震えだしたのである。
『………。………………。………………………。』
だがそれでもルリカは、〈ウズメ改〉はまるで動じなかった。
引いた弓を固定し、時間に対し静的を保ち、機械の算出した計測値と――そして何より、己が積み上げた経験を信じ敵の動きを読む。
無秩序の中の、隠れた秩序を見つけ出す――。
『――!』
瞬間、〈ウズメ改〉が矢を放った。
描かれたその軌道。矢が進む未来。
それは寸分違うことなく、ルリカの貫く意志を反映していて――
「やった!」
見事、鬼の〝三ツ角〟を射貫いてみせた。




