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幻葬鬼譚 ~神話ヲ殺ス少女タチ~  作者: K. Soma
第拾参話 貫く意志

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223/226

24

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 同日 同刻

 /結界封印都市ヒモロギ 第五結界柱跡地付近

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 

(コイツは……ヤバイ、な……っ!)

 

 機械仕掛けの巫女、〈アマテラス〉は窮地に立たされていた。

 

(この力……無理矢理にでも押し潰しちまおうって腹か……⁉)

 

 周囲は膨大な量の粘液に取り囲まれている。それらが意志を持ち容赦なく押し寄せてくるのだ。

 

 両手から放つ〝(アマ)玉垣(タマガキ)〟でどうにか耐え凌いでいるものの、少しでも気を抜けば玉垣ごと圧砕されるか、はたまた隙間から粘液が侵入してくるだろう。

 

(クソ……! ()()()()だってぇのに……!)

 

 この分厚い粘液の壁の向こう。そこに鬼はいた。相も変わらず、二つ折りの身体から飛び出た〝龍蛇(りょうじゃ)〟が天へと(あぎと)を突き立てている。はっきり言って隙だらけだ。

 

 だがそれでも――手出しはできない。

 

 そうしたが最後、己が粘液に呑まれるのが目に見えているからだ。

 

(どうすりゃいい……⁉)

 

 そう自問する。ヒミコの中の冷静な部分はすぐさま応えた。

 

 ――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

(ざっけんな――!)

 

 消えかけていた闘志が再び燃え上がった。

 

 だがそれだけでは事態は動かない。

 

 どうしてもあと一手。あと一手が必要なのだ。

 

(そうすりゃ状況を変えられる……!)

 

 最も単純にして楽な答えは知れている。

 

 だが()()だ。それは()()()だ。

 

 ()()()はもう、行ってしまったのだから。

 

 ……自分でどうにかするしかない。

 

 できるはずだ。

 

 ()番隊の皆が殺されて以来、いつだってそうしてきた。

 

〝人間というのは、本質的に一人で成立している〟

 

 不意にその言葉が頭をよぎった。前に自分が誰かに口にしたその言葉。

 

(そうだ、その通りだ……! だから、だからアタシは――)

 

〝天ツ玉垣〟の発する緋色の光が強まった。

 

 まるで鉛で出来た重い扉を開くようにして〈アマテラス〉が少しずつ少しずつ、粘液を外側へと押し出していく。

 

(討つ……! 鬼を、この鬼を……! ()()()を殺したこの鬼をっ!)

 

 流れる血のすべてを霊気に変えてでも――()()()()

 

 その瞬間、均衡が完全に崩れた!

 

(今だっ)

 

 だが――――――()()()()()

 

 崩れた均衡。

 

 それは〝あちらに〟ではない。

 

〝こちらに〟だった。

 

(何……⁉)

 

 龍蛇が、神話の蛇たる龍蛇が――いつの間にかこちらに向いている。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

(がぁぁあああああぁあああぁぁぁぁッ!)

 

 まるで荒れ狂う濁流に吞まれたかのようである。

 

 粘液がすさまじい圧力を伴い前方から押し寄せてきた。

 

 ヒミコは本能的に玉垣を重ね合わせ、どうにか(しの)いでみせたが……その様子はさながら風前(ふうぜん)(ともしび)。瞬く間に掻き消されてしまいそうである。

 

(ま、まだだ……! まだ、アタシは――――――ぐぅ⁉)

 

 それだけでは終わらない。

 

 今や鬼は、己が放出した粘液のすべてを〈アマテラス〉へ向け集中させていた。

 

 圧力が加速度的に増していく。鬼の周囲の粘液すらこちらに押し寄せ、とうとう木乃伊(みいら)のような身体が大気に露出しだした――――――その刹那(せつな)

 

『 いいぞ神越(カミコシ)。あと一〇秒だけ耐えてくれ 』

 

 通信機を介し、()げられる。

 

 その声は。

 

 もう来ぬと諦めていたソレ。

 

 だがしかし――――――心の奥底では()()()()()()()()()()()()

 

「……遅えんだよ、バカ」

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