09
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(現在)
闘ノ月、忍ノ週、仁ノ日 朝
/結界封印都市ヒモロギ
ツクヨミ 対鬼戦闘司令本部
医療棟 特別治療室
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最悪の気分で目が覚めた。
(またこの夢か……)
嫌な夢。昔の夢。身を斬られるように辛い記憶。
でも。
今となっては〝みんな〟と会える唯一の一時。
(どこだここ……?)
一瞬、あの監獄を想起した。
だが違う。あそこにこんな質のいい布団がある訳ない。万に一つあったとして、自分がそこに寝かされるなど未来永劫あり得ない。
(ちげーよ。そもそも出たんだ。もうあそこからは……。そんでアタシは、アイツに連れられて――)
「あら、気がついたのね」
「!」
思考と現実の映像とが一致した。
「アンタか……」
夜代ミヅキ。自分をここまで連れて来た張本人だ。
そのミヅキが、ヒミコの布団のすぐ横でのほほんとお茶を啜っていた。
「……?」
いや、ミヅキだけではない。
部屋の片隅にもう一人いた。
膝を抱え俯く白い少女が。
(誰だアイツ……?)
奇妙な、とても奇妙な外見である。
〝白い少女〟としか言いようがない。
死人に着せるような白装束は勿論のこと、肌や体毛に爪、果ては瞳の色まで白一色だ。
あまりに白が過ぎ、目に焼きつきそうなくらいである。
しかも幼い。
五歳に達するかどうか、尋常小学校にすらまだ通ってないであろう年頃だ。
背丈など、自分の腰にも届かぬだろう。
「なんだか戸惑っているみたいね」
ミヅキが意味ありげにヒミコの顔を覗き込んだ。
……まあ、いい。なんとも薄気味悪いが、あの少女に関しては一旦置いておこう。いずれミヅキから話があるはずだ。
それより今は、
「……鬼は、どうなった」
そのことが気になる。
鬼。
あの三本角の鬼。
みんなの仇。
アイツはいったいどうなったのだろう。
「なあ、教えてくれよ局長サマ。あのでけー鬼はくたばったのか?」
だがその質問に対するミヅキの反応は予期せぬものだった。
ミヅキは幽かな動揺と共に視線を落とし、震える指先で湯呑みの縁をそっとなぞる。
やがて、ぽつりと言った。
「……あなた、覚えていないの?」




