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幻葬鬼譚 ~神話ヲ殺ス少女タチ~  作者: K. Soma
第拾参話 貫く意志

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215/226

16

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

(現在)

 同日 深夜

 /結界封印都市ヒモロギ 第五結界柱跡地付近

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 

(クソが……! ようやく……見えてきやがった)

 

 既に作戦は始まっている。

 

 あれから鬼は浸食の手を一向に緩めず、第六結界柱方面にまで粘液を広げていた。

 

 なのでヒミコは――〈アマテラス〉は、その近くから〝(アマ)玉垣(タマガキ)〟を展開し、粘液の中を泳ぐようにして()()まで辿り着いたのである。

 

 ここ。粘液に呑まれ溶解した第五結界柱の跡地付近。

 

 鬼を原点とする災厄の(みなもと)

 

「チッ……!」

 

 ヒミコの舌打ちが霊水の中を伝わる。

 

 ()()()()()()だった。

 

 こうして鬼を目にしてヒミコの胸に()き上がるモノ。それは間違いなく怒りと憎しみだ。かつての仲間を討たれたこの恨み。晴らさずにはいられるか。

 

 だが一方で――そこには確かに別の感情も共存している。

 

 ()()()。あれらはどうしようもなく()()()()()、とする憐憫(れんびん)の思い。

 

 コレは自分のモノではない。ないはずなのに……自分のモノとしか思えない。

 

 そのような矛盾に根差した苛立ちが、まるで真綿(まわた)で首を締めつけるが如く、じわりじわりとヒミコの心を浸食していくのだった。

 

(~~ッ⁉ ヤバイ――!)

 

 一瞬、玉垣に僅かな乱れが生じる。

 

 粘液はその隙を見逃さない。ヒビ割れたかのような間隙(かんげき)から一部が這入(はい)り込み、腕部の表面装甲を溶かした。

 

(集中だ……! 集中しろ……!)

 

 意識して霊気を整えるヒミコ。その甲斐あって玉垣は修復し、再度一歩、二歩と鬼に向けて近づいていく。

 

(まだ遠い。もっとだ……もっと近づかねーと)

 

 結局、この作戦はヒミコ一人で行う運びとなった。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ランカはその言葉の通り、ルリカを連れ去ってしまったのである。

 

 無論、直前までミヅキが猛烈に抗議していたものの、ランカは立て板に水でやれ権利や法律などを並び立て(ヒミコには半分も理解できなかった)、徒労(とろう)に終わった。

 

(まあ……仕方がねーことだろ)

 

 ヒミコは最終的にそのような結論に着地している。

 

 最初は何故だか腹が立って仕方がなかった。だがすぐにその理由に気づき愕然(がくぜん)とする。

 

 自分はいつの間にか――ルリカを()()だと思っていたのだ。

 

 だから、そうして何も言わず背を向けられることに強い(いきどお)りを覚える。まるで裏切られたかのような喪失感が広がる。

 

 ……信じられなかった。自分が、そんな風に変わっていたことが。

 

 ここ(ヒモロギ)に来る前は違った。ヒミコにとって、仲間とは常に()番隊と同義であった。

 

 だが。今は――違う。

 

 そうではなくなっていた。

 

(アタシだって御頭(おかしら)に言われたら……従ってたはずだ)

 

 その思いを自覚した途端、とんとん拍子に理解が進んだ。

 

 黙って(うつむ)くルリカ。その横顔を見ているだけで思いが伝わる。

 

 別にルリカとてここを去りたい訳ではない。

 

 でも、逆らえぬのだ。

 

 きっとアレが――ランカ(あの女)の下が、彼女の場所なのだから。

 

 ならばもう、どうしようもなかろう。

 

(だから……仕方がねーことなんだ)

 

 ヒミコはそう自分に言い聞かせた。

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