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幻葬鬼譚 ~神話ヲ殺ス少女タチ~  作者: K. Soma
第拾参話 貫く意志

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213/226

14

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 同日 深夜

 /結界封印都市ヒモロギ 車道

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 

 いつ以来だろう。ランカ()が運転する車に乗せて貰ったのは。

 

 多分……いや、間違いない。尋常小学校を卒業して以来のことだ。

 

 普段はお(かか)えの運転手に任せっきりの母であるが、流石(さすが)にヒモロギへ入るにあたってはそうもいかなかったらしい。

 

 だからこうして自ら運転してきたのだ。

 

 ――昔のように。

 

「………。………………。………………………。」

 

 ルリカの青い瞳が通り過ぎゆくヒモロギの夜景を無意識に追う。

 

 現存する四つの結界柱。いつもならそれら目指して鬼の群れがわらわらと侵攻してくるが、今回に限っては沈黙を保っている。

 

 副司令(シマメ)の推測では〝無駄な損失を避けるためでは?〟とのことだった。

 

 そうかもしれない。

 

 今もなお浸食を広げる第五の(マガ)()(オニ)。己と大地以外のすべてを溶かすあの粘液の前では、きっと敵味方の区別などつかぬのだろう。

 

 見方を変えれば、鬼ですら――あの鬼ですら、仲間に対し相応の態度を示している、という事実に他ならない。

 

 それに引き替え、自分は――

 

(逃げた……逃げ出したんだ……仲間を見捨てて……)

 

 言い逃れの余地もない。

 

 母に言われるがままに荷物をまとめ、車に乗り込み、唯々諾々(いいだくだく)と従っている。

 

 楽な方を、選んでいる――。

 

「……不服ですか?」とその時、ランカが不意に語りかけてきた。「それとも混乱でしょうか。鈴文(すずぶん)では検閲(けんえつ)のせいでろくに事情を説明できませんでしたからね」

 

「母様には……何か、理由があるのですか」

 

 いつからだろう。母娘(おやこ)にもかかわらず、こうしてよそよそしい会話しかできなくなってしまったのは。

 

 この人を〝母様〟と呼ぶようになったのは。

 

「ええ、あります」ランカが黒眼鏡(サングラス)をくいっと持ち上げた。「ですがここではまだ話せません」

 

「……? 何故ですか」

 

「どこに〝目〟や〝耳〟があるかわかりませんからね。(うち)に帰ったらにしましょう」

 

「………………………。」

 

「それでいいですね、ルリカ………………ルリカ?」

 

 その声に応えることはできなかった。

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