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幻葬鬼譚 ~神話ヲ殺ス少女タチ~  作者: K. Soma
第拾参話 貫く意志

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13

「……で?」作戦会議室が重苦しい沈黙に包まれる中、ヒミコが唐突に言った。「アタシはどうすりゃいんだ」

 

 こんな時でもまるで戦意の(おとろ)えぬヒミコにルリカは内心で舌を巻く。

 

「まだ決まった訳ではないのだけれど……」ミヅキがヒミコの方を見て続ける。「まずはあなたに訊きたいことがあるの」

 

「なんだよ」

 

「〝(アマ)玉垣(タマガキ)〟で、どれくらいあの〝粘液〟を(ふせ)げるかしら?」

 

〝天ツ玉垣〟。この世の如何(いか)なる摂理(せつり)をも(へだ)てる壁だ。

 

 なるほど。確かにアレならば粘液に()かされることもあるまい。ルリカはそう得心した。

 

「防ぐだけならどうとでもなると思うぜ」

 

「いいわね、頼もしいわ。では次の質問よ。玉垣を発動させつつ……あの粘液の中を進むことは可能かしら?」

 

「玉垣を()()してってことか」

 

「ええ。この間の時みたいに」

 

 この間。第四の(マガ)()(オニ)のことだ。

 

 あの時〈アマテラス〉は〝天ツ玉垣〟を展開して瘴気(ショウキ)に満ちた黄泉比良坂(ヨモツヒラサカ)内に潜入したと聞く。

 

「それも多分……できる、だろうな。かなりキツイし、時間も限られるだろーが」

 

「なるほど……」ここでミヅキは少々考え込んだ。

 

「けどよぉ、そのまま鬼と戦うってぇのは無理な話だぜ」

 

「……やっぱりそう?」

 

「ああ。この間より押さえ込むのが厄介だからな」

 

 おそらくソレは気体と液体の違いのためだろう、とルリカは推測した。

 

 重さがほとんど無に等しい瘴気に比べ、あの粘液は重く()し掛かってくる。

 

 その中を玉垣で掻き分け進むとなると、それだけで手一杯になりそうだ。

 

「なら神越(カミコシ)、」ここでシマメが口を開いた。「こういうのはできるか? まずは玉垣で粘液を防ぎつつ進む。それである程度まで近づけたら、再度玉垣を整形し、あの鬼を――一時的でいい――粘液から切り離すんだ」

 

「玉垣で本体を剥き出しにしろってか?」

 

「ああ、そうなるな」

 

「無理難題ばっかをポンポンと出してくれるねぇ……」

 

 これはさらに難しい注文だった。〈アマテラス〉のみならず、禍ツ忌ノ鬼もまた〝天ツ玉垣〟を有する。(ゆえ)に両者が接近すると、互いの玉垣が中和するのだ。その中で自身の側だけの玉垣を維持するには、一層高い水準(レヴェル)での整形制御が求められる。

 

 だがヒミコは、

 

「ま、でもできるよ。できると思う。」やれやれとばかりに肩を(すく)めた。「玉垣の整形にだけ全霊力を集中させりゃあいけるはずさ……もっとも、アタシは一歩も動けなくなるだろーがね」

 

「ならこれで打つ手は決まったな」ルリカがポンと手を打った。「まずは神越が粘液の中を進み、本体を露出させる。そこを私が遠距離から狙撃すればいい」

 

「んー、そうだなぁ……それがいいんじゃねーか?」

「そうね……」「うむ」

 

 室内にいくらかの安堵(あんど)が広がる。

 

 ヒミコに加え、ミヅキとシマメも肯定的にコクコクと頷いていた。

 

 ――だが。

 

 横から唐突に割り込んできた次の一言で台無しになる。

 

「……ルリカ、それは許しませんよ」

 

「え」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 それはこれまで沈黙を保っていた――凛堂(リンドウ)ランカの言葉であった。

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