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同日 同刻
/結界封印都市ヒモロギ
ツクヨミ 対鬼戦闘司令本部 中央管制室
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ミヅキはランカと共に中央管制室へと向かわざるを得なかった。
本来なら部外者の立ち入りなどまず在り得ぬ中央管制室に、である。
というのも、用意周到なことにランカは〝旧貴志摩鉱山崩落災害特別視察員〟なる立場に就いており(おそらく帝國上層部への気の遠くなるような根回しの末に勝ち取ったのだろう)、彼女には正式な視察権限が与えられていたのだ。
とはいえそれが――〝月読ノ巫女〟の力を上回ることなぞあり得ない。不用意な発言の一つでも〝影〟に拾われれば、ろくな結末にならぬだろう。
故に当初ミヅキは必死に制止したが、ランカはその様子から何かを察したらしく、
『……わかりました。では、迂闊なことは口走りません。少なくとも、ハヅキさんに直接会えるまでは。それならばよいでしょう?』
と、逆に試すような視線でこちらの目を覗き込む。
残念ながらミヅキにはそれ以上に説得の弁がなく、何よりそもそも時間がなかったため、結局こうして二人で中央管制室に駆け込むことになった。
「ミヅキ。遅かったじゃないか」先に来ていたシマメが振り返る。「む……」そして次にランカへと目をやった。
まずい。早くも敵視されてしまったか? ああ、やはりどうあってもここへの入室は止めるべきだった――
(……え?)
だが意外。シマメはすぐに視線を外し、淡々と状況説明に移った。
まるで〝ランカ如き取るにも足らぬ〟といった様子で。
(それどころではない、ということかしら……?)
ミヅキにはそう思えてならなかった。
「それで、シマメ」だが顔には出さない。平静の仮面を被って先を促す。「敵は?」
「もう間もなく具象化する。それも第五結界柱のごく近くで、だ」
「なんですって……⁉」
これまでの鬼は総じてヒモロギの中心――黄泉比良坂の近辺で顕現し、そこから各方面と侵攻してきた。
それが今回に限ってはいきなり結界柱の付近で……?
「待って――」その時、ミヅキの脳裏に閃光が走る。「第五結界柱……?」
「ああ、そうだ」シマメもおそらく同じ考えなのだろう。ゆっくりと頷いた。「前回の戦いで、第四の禍ツ忌ノ鬼が鬼門を開こうとしていた場所だ……」
「何らかの痕跡が残されていた、ということかしら……?」
「おそらくな。それを利用して具象化しようとしているんだ。とはいえ――」シマメの声が若干和らぐ。「前回のように、結界柱へ直接鬼門を形成する訳ではない。あくまでその付近だ。だから〝対消滅〟のおそれはないよ」
「その点だけは少し安心ね……」
「――鬼門形成が始まりました!」そこへスズの声。彼女も急いで駆けつけたのだろう。額には玉の汗が浮かんでいた。「鬼、具象化します!」
前面の巨大描影装置が第五結界柱周辺の映像に切り替わる。
大地に広がる漆黒の染み。魄子密度の数値から禍ツ忌ノ鬼であるのは間違いない。解析官の意見も完全に一致している。
(こうも早くては間に合わないわ……!)
〈アマテラス〉と〈ウズメ改〉はまだ格納庫だ。
遺憾ながら第五結界柱は捨てざるを得ないか――ミヅキがそう苦悩していた折、
「へ……?」
思わず。間の抜けた声が口から漏れる。
「これが……鬼、なの?」
描影装置に現れた、その映像は――




