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幻葬鬼譚 ~神話ヲ殺ス少女タチ~  作者: K. Soma
第拾参話 貫く意志

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207/226

08

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 同日 同刻

 /結界封印都市ヒモロギ

  ツクヨミ 対鬼戦闘司令本部 執務室

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 

「あの人が――()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 この人は。

 

 そんなことまで知っているのか――?

 

 今度ばかりはミヅキも動揺を隠し切れなかった。

 

「せ、先輩は知ってるんですか。私の……」

 

 ()()()()()

 

 意思ではそう言おうとしたが、実際には口に出せない。(かす)れたような情けない音が喉から漏れ出るのみだ。

 

 どうしてもその言葉を使うには――あの人(ハヅキ)を母と呼ぶには、強い躊躇(ためら)いが生じる。

 

 それほどまでにミヅキの胸内に渦巻く思いは混沌としていた。

 

 それを知ってか知らでか、

 

「……そう驚くこともないでしょう」ランカは話を先に進める。「ちょうどあなたと私の関係のようなモノです。私が帝國巫女局に入って間もない頃、既にあの人は局長の座に()いていて――特に巫女頭(みこがしら)となってからは、あれこれとお世話になりました」

 

「そんなの……初めて聞きました」

 

「これまで話す機会がありませんでしたからね。昔のあなたでは聞く耳を持たなかったでしょうし」

 

「うぐっ……!」またもや痛いところを突いてくる。

 

「何より、私がハヅキさんの()()()について知ったのは最近ですから」

 

「……そうだったんですか」

 

 世間ではハヅキは早逝(そうせい)したことになっている。

 

 しかし、真実は違う。

 

 母はその後も生き続けていた。

 

 時を(さかのぼ)り、月を読むバケモノ――〝月読(ツクヨミ)ノ巫女〟として。

 

 それを知るのは肉親の自分か、はたまたツクヨミや帝國上層部のごく一部のみである。

 

 ランカが知らなかったのも無理はない。

 

「この組織……ツクヨミを実際に動かしているのはハヅキさんなのでしょう?」

 

「……ええ、そうです」

 

「では、会わせて下さい。残念ですがミヅキ、あなたでは話になりません」

 

「せ、先輩! それは――」

 

 ()()()()()()

 

 悪手である。

 

 今、どうにかランカのことを見逃して貰えているのは、ミヅキ(自分)が説得するという(てい)だからだ。

 

 そこを飛び越え、ランカが直接ハヅキと対峙しようものなら――向こうも最早(もはや)、容赦しまい。

 

 ましてやランカは想像以上にツクヨミの暗部に迫りつつある。ミヅキもまた、明かしたいと願ってやまぬ暗部に。

 

 この時機(タイミング)で手札を(さら)すのは危険すぎる――。

 

「それは……無理です、先輩……」

 

 そうするくらいならばランカ(この人)にすべてを打ち明け、同志となって貰う方がいい。

 

 だがヒモロギ(ここ)では駄目だ。どこに〝(カゲ)〟の目や耳があるかしれない。現時点でさえかなりの危険性(リスク)(はら)んだ会話となっているのだ。

 

 するならば後日、ヒモロギの外がいい。出張などで機会を見つけて接触しよう――ミヅキはそう決断し、そそくさとランカに退室を(うなが)す。

 

「申し訳ありませんが、どうか今日のところはお引き取りを……」

 

「……そうですか」

 

 ランカは立ち上がり、黒眼鏡(サングラス)を掛け直した。

 

 ……よかった。ひとまずこれで納得してくれたらしい。

 

 ミヅキはほっと胸を撫で下ろすが――――――しかし、

 

「ならば、交渉決裂ですね」

 

「え」

 

「先日伝えた通り、()()()()()()()()()()()

 

 ミヅキは完全に見落としていた。

 

 黒眼鏡(サングラス)の下で、ランカの青い瞳がメラメラと怒りに燃えていたことを。

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