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幻葬鬼譚 ~神話ヲ殺ス少女タチ~  作者: K. Soma
第拾参話 貫く意志

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206/226

07

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 同日 日没後

 /結界封印都市ヒモロギ

  ツクヨミ 対鬼戦闘司令本部

  月魅(ツキミ)ノ塔 最上階 神託ノ間

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 

 西の山へと日が沈み、東の空から月が昇る。

 

 それに合わせ、ハヅキは少しずつ目を開き、紫の瞳を月光へと向けた。

 

 そのハヅキに、

 

「――以上が〈アマテラス〉の報告となります」

 

 シマメが顔を伏せたまま()げた。

 

 室内には他に誰もいない。二人がこれまでに幾度となく繰り返した密談の最中(さなか)である。

 

「……つまりこういうことですか」ハヅキが淡々とした声で述べた。「技術部は言うに及ばず、()()()()()の方でも何もわからなかった、と」

 

〝あなたたち〟とはシマメが指揮を取る〝(カゲ)〟のことを()す。

 

〝影〟には実動部隊に加え、地下の拠点――他の職員には存在さえ知られていない――で研究開発を担当する人員も存在していた。

 

 言うまでもなくその者たちの研究対象は秘中の秘であり、長年に渡り積み重ねた知見は、技術部が有するソレとは雲泥(うんでい)の差だ。

 

 しかし、その〝影〟を(もっ)てしても、

 

「恐れながら……〝月読(ツクヨミ)ノ巫女〟さまの(おっしゃ)る通りです」

 

 先の戦いで見せた〈アマテラス〉の()()

 

 その全容は掴み切れなかったのである。

 

「そうですか……」

 

 ほんの少し、目を細めるハヅキ。見ようによっては若干の落胆か――はたまた猜疑(さいぎ)の念を示したかのようだ。

 

 それもそのはず。

 

 アレだけは、彼女の計画にない出来事であった。

 

「ことによると……」ハヅキは昇り来る月を見詰めたまま独白のように続ける。「〝(ニエ)〟が――その()()()()()()()()がいるのかもしれませんね」

 

「そんな馬鹿な……!」シマメがカッと目を見開く。「()()()()()()()()()()()()()ということですか……⁉ 鬼の中で……⁉」

 

「ちがいますよ、シマメ。私が言っているのは〈()()()()()〉のことです」

 

「……!」

 

 シマメは押し黙る。()()()については直接関わっていないため多くを知らぬのだ。

 

 何しろシマメが〝影〟に加わったのは五年前――ちょうどミヅキが帝國巫女局長に就任した頃である。

 

 その()の出来事に関しては、記録で表面的な事実を知るのみだ。

 

「ですが、あなたの話にも一理あるのかもしれません」ハヅキが思い直したかのように言う。

 

「といいますと……?」

 

「〈アマテラス〉だけでなく、(マガ)()(オニ)の側でもまた残滓(ざんし)(ひそ)んでいるのかもしれません。それが先月の余計な〝(ケガ)レ〟を吸収した際に活性化してしまった……十分にあり得ることです」

 

 その話ならシマメにもわかった。

 

 余計な〝穢レ〟。ソレはあの哀れな金光(カナミツ)老人のことに他ならない。

 

 ()の者の肉体と魂魄は今なお〝影〟の研究材料として活用されていた。

 

「ですが〝月読ノ巫女〟さま……そうなるといったい、我々はどう対処すればよろしいのでしょうか?」

 

「………。」黙考するハヅキ。だがやがて、(かす)かに唇の(はし)を吊り上げた。「……かまいません」

 

「は?」

 

()()()()()()()()()()()()()

 

「し、しかしそれでは――!」

 

「いいのです。無理にそれらを取り除こうとすれば〝虚夢(キョム)〟や〝無幻(ムゲン)〟にも少なからず影響を及ぼすでしょう……。我々は今まで通り、人事を尽くして天命を待つ………………いいえ、()()()()()()()()()()()()としましょう」

 

 言ってハヅキは可笑(おか)しそうに肩を震わせる。

 

 シマメはそんな風に(わら)うハヅキを初めて目にした。

 

 だがそれも(つか)()

 

「……おや、」

 

 不意にハヅキの動きが止まる。

 

「い、いかがなさいましたか〝月読ノ巫女〟さま」

 

「早速、月命(げつめい)が下りました」

 

「では――」

 

「ええ、来ます。第五の鬼が……」

 

 黒禍(クロマガ)()(オニ)が。

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