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凛堂ランカ。
緋暦一一五年から一二五年までの一〇年間、帝國巫女局長の役職に就いていた女傑である。
ついでに言うのならその前は、精鋭中の精鋭、時に〝帝國ノ花〟とも称される帝國巫女局が壱番隊、その巫女頭を務めていた過去を持つ。因果なことに、この点でもランカはミヅキの〝先輩〟にあたるのだ。
さらにさらに、もっと踏み込んでしまえば〝史上最年少の壱番隊巫女頭にして帝國巫女局長〟などと持て囃されるミヅキであるが、その〝史上〟は案外せわしない。というのも、この賞賛はそのままランカが受けていたソレでもあるのだ。運の巡り合わせや上層部の意図と広報戦略が重なった結果、ミヅキが更新してしまった形である。
……そしてミヅキは知っていた。ランカが実は、その件にあまりいい感情を持っておらぬことを。
現に今も、
「……そんな調子では〝史上最年少のなんとやら〟の名が地に墜ちますよ?」
「ひゃ、ひゃい! ごめんなひゃい!」
こうである。事あるごとにチクリ、チクリと刺してくるのだ。
まったくいい性格をしている――とは口が裂けても言えぬ後輩の身の世知辛さであった。
……と、まあ。このように大層重複の多い二人だが、一方で帝國巫女局長の座を辞してからの道のりは大いに異なる。
ミヅキに関しては言うまでもなく、こうしてツクヨミという得体の知れぬ組織で表向きの長を務めている。歴代局長の大半が、退任後、巫術管理省やその関連部署の重職に就くことを踏まえれば、異例の進路と言えよう。
だが、異例の具合ではランカも決して劣らない。
なんと彼女は省庁から綺麗さっぱりと身を引いたのも束の間、衆議院選挙への立候補を電撃表明し、さらには他の追随を許さぬ圧倒っぷりで当選を果たしたのだ。
大緋帝國の議会は貴族院と衆議院に二分される。前者が世襲や身内の輪番を前提とする閉鎖的なモノであるのに対し、後者は純粋に選挙で選出された議員から成る。過去に局長経験者の貴族院入りは数例あったものの、衆議院となると皆無であった。
そんな状況にもかかわらず見事議席を勝ち取り、さらに昨今では衆議院内で超党派を結成し遺憾なく辣腕を振るうランカは、やはり女傑と以外に言いようがなく――ミヅキにしてみれば、厄介に輪をかけ服まで着せたような相手であった。




