04
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
同日 同刻
/結界封印都市ヒモロギ
ツクヨミ 対鬼戦闘司令本部 執務室
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
白衣が嫌ーな汗でじっとりと濡れてくるのをミヅキは自覚した。
ここは彼女に与えられた執務室である。光沢を放つ黒革張りの腰掛け、深みのある木目が艶やかな調度品、片隅に置かれた植木鉢から伸びる若々しい緑の葉……部屋の主の趣味と品格が嫌味にならない程度に主張されている。
部屋の主。
それはそう、間違いなくこの自分――夜代ミヅキのはずだ。はずなのだ。
だというのに。
何故こうも、自分は肩を強張らせ、身を縮こまらせているのだろう……?
何故こうも、相手は〝ででん!〟と腰掛け、バチバチと雷を落としてくるのだろう……?
ここ最近、ミヅキは週末が訪れる度に沈痛な面持ちでそんな自問ばかりを繰り返していた。
「……ミヅキ。人の話を聞いていますか?」
「ひゃ、ひゃい! 聞いてまひゅ!」
自答は実に単純である。
女の社会にはなかなかどうして、抗えぬし盾突けぬし口答えさえ許されぬ特別な関係がある。
たとえばそう、過去に仕事で大変お世話になった……〝先輩〟とか。
「……あなたも来年でもう三〇でしょう。いつまでそんな女学生気分でいるのですか」
「ひゃ、ひゃい! ごめんなひゃい!」
平身低頭。ミヅキはペコペコと頭を下げるばかり。
それもそのはず。
彼女の前で今、一切の妥協を許さぬ凛とした態度で雷を落とし続けているのは――大緋帝國が巫術管理省、第二五代帝國巫女局長を務め上げた、凛堂ランカ。
三年前まで第二六代帝國巫女局長の役職に就いていたミヅキの、紛う事無き〝先輩〟にあたる。
ちなみに現役時代はミヅキも含め、多くの巫女たちから畏怖と畏敬の念を込めこう呼ばれていた。
〝青鬼ランカ〟




