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幻葬鬼譚 ~神話ヲ殺ス少女タチ~  作者: K. Soma
第拾参話 貫く意志

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202/226

03

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 同日 同刻

 /結界封印都市ヒモロギ

  ツクヨミ 対鬼戦闘司令本部 高度性能試験場

  中央棟 七階 制御観察室

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 

 スズはなんとはなしに窓から空を見上げた。

 

 気づけば(カン)ノ月もあと少し。三日後には秋の終わりである(モン)ノ月を迎える。

 

 だからだろうか。硝子(ガラス)越しの()み渡った秋空には、早くも冬の()てつく息吹(いぶき)が身を(ひそ)めている気がしてならない。

 

(今年もあと三ヶ月か……)

 

 ほふぅ、と複雑な溜息が胸中から漏れ出る。

 

 残すは(モン)ノ月と(アン)ノ月と(ヘイ)ノ月……そして訪れるは終年祭(シュウネンサイ)だ。

 

 当たり前といえばぐうの()も出ぬほど当たり前の話だが、()が明ければまた一つ、()を取ってしまう。

 

 来年でもう二六だ……。二と六を()せば八。末広がりの八である。こいつぁ春から縁起がいいや……などと意味不明な思索(しさく)(ふけ)るスズだったが、そこへ、

 

「悪いスズ」カヤからの呼びかけ。「制御系の霊波数分布を出してこっちに送ってくれないか?」

 

「あ、うん」スズは手元の端末を素早く操作し要望に応える。

 

「お、きたきた。ありがとね」

 

「いえいえ、どういたしまして」

 

 カヤが再び描影装置(モニタ)との睨めっこをはじめたのを見て、スズはもう一度窓へと視線を投げかける。

 

 どこか寒々しいほどに広い青空。その下では今、巫女を模した巨人〈ウズメ改〉が鎮座していた。その身体には無数の鉄索(ケーブル)が接続され、様々な観測機器がずらりと立ち並ぶ。

 

 本来は今日、()ノ日は休日だが、〈ウズメ改〉の最終稼働試験における臨時の人員としてスズは駆り出されていた――()()()()()()()()

 

(あ……!)

 

 だが、その真の目的は違う。

 

(終わったよ、カヤちゃん……!)

 

 チラリとカヤを見遣ると、あちらも察したらしく小さく頷き返してきた。

 

 スズの手には今、端末から外されたばかりの小さな記録媒体が握られている。カヤ以外の誰にも気取(けど)られぬよう、スズはそっとそれを(ふところ)に戻した。

 

(ふぅ……やな汗かいちゃった……)

 

 一仕事を終え、内心で(ひそ)かに安堵する。

 

〝私も二人に協力します〟

 

 二週間前のあの言葉は嘘ではない。

 

 だからこうして危険を(おか)してまでスズは行動(アクション)を起こした。

 

 行動(アクション)。端的に言えばツクヨミの情報通信網(ネットワーク)内に間諜(スパイ)を忍ばせたことになる。

 

 というのも、ミヅキとカヤの話では二人の権限――組織図上では頂点とその近傍に位置する者の権限――を(もっ)てしてもなお閲覧できぬ不可解な情報群(データベース)が存在するらしい。組織としてのツクヨミに信を置けなくなった三人は、色々と話し合った末、そこへの潜入に解決の糸口を見出(みいだ)したのだった。

 

 だが、これは口で言うほど簡単な話ではない。

 

 情報群(データベース)は巧妙に隠されているらしく、一定の周期で情報空間上での位置を変える。さらには警戒(セキュリティ)も厳重でちょっとやそっとでは歯が立たない。その上で、こちらが接続(アクセス)した痕跡(こんせき)を残したくないとくれば、それはもう、ほとんど〝神がかり的な所業(しょぎょう)〟が求められているに等しかった。

 

(ああ……ひさしぶりだなぁ、こんなに熱中したの……)

 

 その〝神がかり的な所業〟を、この詮索狂(せんさくきょう)もといスズはやってのけたのである。

 

 というのも、彼女は自身の(さが)を深く恥じており、そのためカヤを除く周囲の人間にはひた隠しにしていたが――女学生時代から()()()では玄人(プロ)顔負けの腕利(うできき)きだ。

 

 カヤ(いわ)く〝もしも素性がバレてたら、絶対に技術部じゃなく情報部に配置されてたね〟とのことである。

 

(とりあえずこっちはこれで済んだけれど……)スズはほっと肩を撫でおろし、冷めた湯飲みに手を伸ばした。(司令の方は()()()()()()……?)

 

 あちらはあちらで()()()()()に巻き込まれている。

 

 スズはまた〝ほふぅ〟っと小さく溜息を()いた。

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