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閑ノ月、恵ノ週、佳ノ日 夕方
/結界封印都市ヒモロギ
ツクヨミ 対鬼戦闘司令本部 高度性能試験場
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(――カ)
遠くで。
(――リカ)
聞こえる。
(――ルリカ)
声が。
自分を呼ぶ、声が。
「~~っ⁉」
瞬間、ルリカの意識が鮮明となった。
『ルリカ、聞こえてるかい?』
「は、はい。大丈夫です」
『そっか。じゃあ次の試験だ。今度は疑似太極炉の実効稼働率を六割にまで高めるから――』
技術部官長、カヤの声だ。通信機越しに聞こえる。
ルリカが今いるのは、まるで機械仕掛けの寝屋だった。
ここは擬霊式駆動人形の中、操者席である。
以前に比べれば格段に広い。細々とした釦や操作棒は合理的な配置でまとめられ、描影装置は画質と大きさの双方で向上しつつ、最適な位置と角度を保っている。たとえるなら贅肉が徹底的に削ぎ落とされ、気品ある骨格と筋肉が匂い立つような機能美を作り上げている、というところか。
(まったくすごいな……異ノ国々の技術力は)
試験稼働が始まって以来、既に何度も操者席には身を置いているが、ルリカはその度に新鮮な感動を覚えずにはいられない。
人形の名は――〈ウズメ改〉。
第三の禍ツ忌ノ鬼との戦いで大破した〈ウズメ〉を、〈サグメ〉の予備部品の大半を投入して大改修した機体だ。
故に以前の〈ウズメ〉に比べれば何もかもが進歩している。外観は〈サグメ〉とよく似ていた。二機が並び立てばまさしく姉妹の絵となるだろう。全長は旧〈ウズメ〉に比しておよそ三倍、関節や骨格は多少の粗さを残すものの、それでも大きく人体へと近づいていた。
この〈ウズメ改〉ならば大型鬼など物の数ではない。〈アマテラス〉との連携次第では、禍ツ忌ノ鬼とすら真っ向から渡り合えるだろう。
言うなればこの機体は現時点での人類が導き出した結論だ。これ以上の改善には地道に年月を重ねるより他ない。
その操者として旧〈ウズメ〉から引き続き選ばれたルリカは心躍らせる思いであったが――
『……久しぶりですね、ルリカ』
ふとその言葉が胸によぎる。仄暗い不安と焦りの念と共に。
(お母さん――)
母との再会から、既に二週間が経とうとしていた。




