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幻葬鬼譚 ~神話ヲ殺ス少女タチ~  作者: K. Soma
第拾参話 貫く意志

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200/226

01

 最初はただ、褒められてうれしかった。

 

 うれしかったのだ。

 

 父と母。

 

 とりわけ母に。

 

 同じ青い目をした母に、褒められるのが。

 

 ……優しい母だった。心の底からそう思う。

 

 ()()()、つまり過去形として。

 

 母が変わってしまったのはいつからだろう。

 

 ……わかっている。自分でもよくわかっている。忘れたくても忘れられないのだから。

 

 やはり尋常小学校に上がった頃からだ。

 

 それまではほんのお遊びに過ぎなかった諸々(もろもろ)が……その時期を(さかい)に〝訓練〟へと変わった。

 

 訓練。当時はまだ初潮すら迎えておらず、緋ノ巫女の力などなかった。にもかかわらず、()え間なく課され続けた……厳しい訓練。

 

 それだけではない。

 

 この頃から徹底的に〝上に立つ者〟として求められる品格や教養を叩き込まれた。

 

〝上に立つ者〟。

 

 そう、母はこの言葉が好きだった。

 

 夜代(ヤシロ)()いで由緒正しき家柄である凛堂(リンドウ)の血筋。

 

 母は何よりもそれを大事にしていた節がある。

 

 何よりも。

 

 ……私よりも。

 

 妹が生まれてからはますますとその思いが強くなった。

 

 誰も私を見てくれていないのでは、とする不安に四六時中(さいな)まれていた。

 

 母が見ているのは私ではなく、凛堂(リンドウ)の家を継ぐ〝人形〟かもしれない――そんな思いばかりに(とら)われていたのである。

 

 だから私は。

 

 必死で()()した。

 

 まるで――そう、溺れる者が空気を求め水面(みなも)へと顔を突き出すかの如く。

 

 そうすれば、きっと自分を見つけてくれる。そうに決まっている。そんな健気(けなげ)とも……愚かとも取れる幻想(思い)(いだ)いて。

 

 結果は言うまでもなかろう。

 

 そういう風に足掻(あが)けば足掻(あが)くほど、私はより人形に近づいた。

 

 母の求める美しく(ひい)でた人形へ。

 

 自分の意志を持たず、周囲の人間という糸だけで動く人形へ。

 

 人形の中には。

 

 何もない。

 

 伽藍洞(がらんどう)だ。

 

 だから一人では何もできない。

 

 誰かがいないと動けない。

 

 それこそが私――凛堂(リンドウ)ルリカの本質だった。

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