01
最初はただ、褒められてうれしかった。
うれしかったのだ。
父と母。
とりわけ母に。
同じ青い目をした母に、褒められるのが。
……優しい母だった。心の底からそう思う。
だった、つまり過去形として。
母が変わってしまったのはいつからだろう。
……わかっている。自分でもよくわかっている。忘れたくても忘れられないのだから。
やはり尋常小学校に上がった頃からだ。
それまではほんのお遊びに過ぎなかった諸々が……その時期を境に〝訓練〟へと変わった。
訓練。当時はまだ初潮すら迎えておらず、緋ノ巫女の力などなかった。にもかかわらず、絶え間なく課され続けた……厳しい訓練。
それだけではない。
この頃から徹底的に〝上に立つ者〟として求められる品格や教養を叩き込まれた。
〝上に立つ者〟。
そう、母はこの言葉が好きだった。
夜代に次いで由緒正しき家柄である凛堂の血筋。
母は何よりもそれを大事にしていた節がある。
何よりも。
……私よりも。
妹が生まれてからはますますとその思いが強くなった。
誰も私を見てくれていないのでは、とする不安に四六時中苛まれていた。
母が見ているのは私ではなく、凛堂の家を継ぐ〝人形〟かもしれない――そんな思いばかりに囚われていたのである。
だから私は。
必死で努力した。
まるで――そう、溺れる者が空気を求め水面へと顔を突き出すかの如く。
そうすれば、きっと自分を見つけてくれる。そうに決まっている。そんな健気とも……愚かとも取れる幻想を抱いて。
結果は言うまでもなかろう。
そういう風に足掻けば足掻くほど、私はより人形に近づいた。
母の求める美しく秀でた人形へ。
自分の意志を持たず、周囲の人間という糸だけで動く人形へ。
人形の中には。
何もない。
伽藍洞だ。
だから一人では何もできない。
誰かがいないと動けない。
それこそが私――凛堂ルリカの本質だった。




