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(四年前)
閉ノ月、終年祭、第伍ノ日 深夜
/八砦県 琴水群
貴志摩鉱山 第三坑道
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灯かり一つない夜の坑道。
その闇を物ともせず進む少女たちがいた。
巫術管理省、帝國巫女局、肆番隊。
その筋では〝死ノ巫女〟として恐れられる特殊部隊だ。
隊員の数は一〇名と少ない。全員が一〇代から二〇代の緋ノ巫女で構成される。
中でも一番年少の隊員が溜息交じりに呟いた。
「終わり良ければ総て良し、とはよく言ったもんだよな」透き通るような白い肌。腰まで届く長い黒髪。血のような緋色の瞳。「まっさか一年の締め括りの日にまでこうして駆り出されるたぁ思ってもみなかったぜ……」ヒミコである。
「アハハハハハハ!」外見的にはヒミコよりいくらか幼い少女がケタケタと笑った。「アタシららしいじゃん! この分なら来年も絶対ロクなことがないね! アハハハハハハ!」
「ちょっとー、よしなさいよ二人ともー」瓜二つの容姿をした少女がそれを諫める。「特にめのーちゃん。今はお仕事中なのよー?」双子の姉、浮嶋コハクだ。
「まったくもう。ハク姉は口うるさいんだから。そんなんじゃ大きくなれないよ?」
「いや、それはメノウ姉も同じだろ。姉妹揃ってちんちくりんじゃねーか」
「「おだまり」」
尋常小学校に通っている、と言っても通用しそうなほど幼い見た目の浮嶋姉妹だが、その実はヒミコより三つ年嵩の一六だ。
「まったくアンタって子は。ついこの間までこーんなチビだったくせに」メノウが大げさに手の平を下に向けヒラヒラさせる。
「そーよそーよー。背ばっかり伸びたと思ったら急にナマイキになっちゃってー。お姉ちゃん、かなしいわー」コハクがわざとらしい泣き真似をした。
「――そこまでにしな、アンタたち」突如、最年長の巫女が割って入る。「この先に竪抗がある。そこから最下層まで降りるよ」浅黒い肌にギョロリとした三白眼。肆番隊の巫女頭、黒麻ヨウコである。
「「「わかりました、御頭」」」
三人が三人、すぐさま玄人の顔に戻って従順の意を示した。
ヒミコと浮嶋姉妹にとって、ヨウコは単に隊を束ねるだけの存在ではない。
孤児となった自分たちを引き取り育ててくれた、言うなれば母親代わりの人である。
「下まで降りたら手分けして捜索するよ」
「……鉱夫が数十人、行方不明ってことなんですよねー?」
「ああ。それに加えてアタイらより前に参番隊の連中が調査に入ってるんだが……誰一人として戻っちゃいない。アイツらの事前調査じゃあ住民たちの間でこんな噂が流れてるらしいよ――」
貴志摩ヶ山ニハ鬼ガ棲ム。
貴志摩ヶ山ノ鬼隠シ。




