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同日 同刻
/結界封印都市ヒモロギ
ツクヨミ 対鬼戦闘司令本部 中央管制室
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「何が起きたの⁉」ミヅキが我に返り声高に問う。
「逆具象化空間だ……!」シマメがそれに応えた。「逆具象化空間を経由して、空間を転移したんだよ……! 自ら鬼門を形成してな……!」黒い瞳は驚愕に彩られている。「そんなことができるなんて……信じられん……! そうか、あの夜もこうやって――」
あの夜。
ようやくミヅキにもシマメの言わんとしてることがわかった。
それはヒミコが初めてヒモロギに足を踏み入れた日。〈アマテラス〉が自らの意思で彼女を迎え入れた日のことだ。
あの夜も、〈アマテラス〉は封印されていたはずの地下格納庫から突如地上へ――ヒミコの下へと降り立った。
まるでそう、月神教に伝わる神の降臨が如き光景……。
「いけない――ッ!」ミヅキの思考が再び現実に戻った。「〈アマテラス〉は⁉」
破壊の奔流は既に放たれている。そして今なお、続いていた。
〈アマテラス〉は〈サグメ〉を守るべく、真っ向からその前に立ったのである。
前回、あれほどの大損傷を負ったにもかかわらず――。
「だ、大丈夫です!」スズの金切声が耳に届く。「〈アマテラス〉、〝天ツ玉垣〟で対消滅砲を防いでいます!」
「なんですって⁉」
どういうことだ?
前回は敵の攻撃に耐え切れず墜とされた。
それが今回は、何故――?
「アレを見ろ!」
おそらくはスズが気を利かせたのだろう。シマメが叫ぶと同時に巨大描影装置の一部が拡大された。
映像は〈アマテラス〉が天に翳すが如く掲げた両の掌に肉薄する。
瞬間、ミヅキにも〈アマテラス〉の――否、ヒミコの狙いが見て取れた。
「すごい……!」紫色の目を見開くミヅキ。「あの子は……自在に操っているのだわ……自分の意志で、玉垣を……!」
答えとしては酷く単純である。
薄い守りならば重ねて固めればいい。
ただソレだけである。
映像の中の〈アマテラス〉は格子状の緋色の光壁を幾層にも展開していた。
「ああ、だが……」シマメの苦い声。「アレではギリギリだな」
残念ながらこの場合でも保存則は厳格に守られるらしい。
〝天ツ玉垣〟を重ねれば重ねるほど、その効果範囲は狭まるようだ。
今も対消滅砲から辛うじて肩身程度の広さを守れているに過ぎず、肩部装甲と一体化した巫女装束の一部は灰燼と化している。
これではまるで風前の灯だ――〈アマテラス〉とその背に守られた〈サグメ〉を見て、ミヅキはそう思わずにはいられない。
きっと中央管制室の誰もが皆、同じ不安に駆られているのだろう。
(でも、それでも――)
火は、まだ消えていない。
その事実こそが、彼女らの最後の希望であった。




