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幻葬鬼譚 ~神話ヲ殺ス少女タチ~  作者: K. Soma
第九話 幻想の花/背負った命

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22

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 同日 同刻

 /結界封印都市ヒモロギ

  ツクヨミ 対鬼戦闘司令本部 中央管制室

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 

「何が起きたの⁉」ミヅキが我に返り声高(こわだか)に問う。

 

「逆具象化空間だ……!」シマメがそれに応えた。「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……! 自ら鬼門(キモン)を形成してな……!」黒い瞳は驚愕に(いろど)られている。「そんなことができるなんて……信じられん……! そうか、()()()もこうやって――」

 

 ()()()

 

 ようやくミヅキにもシマメの言わんとしてることがわかった。

 

 それはヒミコが初めてヒモロギに足を踏み入れた日。〈アマテラス〉が自らの意思で彼女を迎え入れた日のことだ。

 

 ()()()も、〈アマテラス〉は封印されていたはずの地下格納庫から突如地上へ――ヒミコの(もと)へと降り立った。

 

 まるでそう、月神(ツキガミ)教に伝わる神の降臨が如き光景……。

 

「いけない――ッ!」ミヅキの思考が再び現実に戻った。「〈アマテラス〉は⁉」

 

 破壊の奔流は既に放たれている。そして今なお、続いていた。

 

〈アマテラス〉は〈サグメ〉を守るべく、真っ向からその前に立ったのである。

 

 前回、あれほどの大損傷(ダメージ)を負ったにもかかわらず――。

 

「だ、大丈夫です!」スズの金切声が耳に届く。「〈アマテラス〉、〝(アマ)玉垣(タマガキ)〟で対消滅砲を()()()()()()!」

 

「なんですって⁉」

 

 どういうことだ?

 

 前回は敵の攻撃に耐え切れず()とされた。

 

 それが今回は、何故――?

 

「アレを見ろ!」

 

 おそらくはスズが気を()かせたのだろう。シマメが叫ぶと同時に巨大描影装置(モニタ)の一部が拡大された。

 

 映像は〈アマテラス〉が天に(かざ)すが如く(かか)げた両の(てのひら)肉薄(クローズ・アップ)する。

 

 瞬間、ミヅキにも〈アマテラス〉の――否、ヒミコの狙いが見て取れた。

 

「すごい……!」紫色の目を見開くミヅキ。「あの子は……()()()()()()()()()()()……自分の意志で、玉垣を……!」

 

 答えとしては酷く単純である。

 

 薄い守りならば()()()()()()()()()

 

 ただソレだけである。

 

 映像の中の〈アマテラス〉は格子状の緋色の光壁を幾層にも展開していた。

 

「ああ、だが……」シマメの苦い声。「アレではギリギリだな」

 

 残念ながらこの場合でも保存則は厳格に守られるらしい。

 

〝天ツ玉垣〟を重ねれば重ねるほど、その効果範囲は(せば)まるようだ。

 

 今も対消滅砲から(かろう)うじて肩身程度の広さを守れているに過ぎず、肩部装甲と一体化した巫女装束の一部は灰燼(かいじん)と化している。

 

 これではまるで風前の(ともしび)だ――〈アマテラス〉とその背に守られた〈サグメ〉を見て、ミヅキはそう思わずにはいられない。

 

 きっと中央管制室の誰もが皆、同じ不安に駆られているのだろう。

 

(でも、それでも――)

 

 ()()()()()()()()()()

 

 その事実こそが、彼女らの最後の希望であった。

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