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同日 同刻
/結界封印都市ヒモロギ 第六結界柱付近
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その刹那、夜が明けたのかとミヅキは錯覚した。
だが違う。そうではない。
ミヅキは顔を上げ、視線を空へ。幾重もの結界で彩られた夜空へと移す。
そこには――〝巫女〟がいた。
違うと知っていても、そうとしか見えなかった。
白衣に緋袴を穿き、仮面をつけた巫女。
煌々と後光が射している。
「そんな――」
ミヅキの心の内に生まれた感情。
それは畏怖に他ならない。
彼女の目には、光輪を背負った巫女が天ツ国から舞い降りたが如く映っていた。
地上で待ち受ける禍ツ忌ノ鬼が、奇しくもそこに鮮烈な対比を添える。
どちらも大きい。天と地、光と闇を象徴した巨神と巨神の対峙。
「自ら封印を解いて出たというの……?」
よく見れば巫女の手足には幾重もの千切れた注連縄が巻きつき、装甲には御札の残骸と思しき燃滓が散見する。
――装甲。
そう。それがあるからこそ、辛うじて〝これは兵器だ〟と理性で信ずることができた。
人型。完全な人型。〈ウズメ〉のように人類の技術という制限で歪曲されたのではない、人としての精緻な骨格、関節、肉。それらを無機物で代替し、その上から巫女装束と一体化した装甲を被せている。
これほど人に酷似していながら――人ではなく神が、〝月ノ神〟が創り賜うたとされる唯一無二の作品。
「神越さん……⁉」
その作品が今、下腹部の装甲を蓮華のように花開かせ、自らの体内へと――胎内へとヒミコを導く。
「……目覚めるのだわ」
鬼を討つ機械仕掛けの巫女。
其の名は――霊式駆動人形〈アマテラス〉。
~第壱話 解き放たれた少女 完~




