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幻葬鬼譚 ~神話ヲ殺ス少女タチ~  作者: K. Soma
第九話 幻想の花/背負った命

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18

 どうしてこんな簡単なことに気づけなかった――?

 

 三日前。

 

 そう、すべては三日前の夕方での出来事だ。

 

 下校中にハクがユイナに気づき、その後、会話の最中(さなか)で突如姿を見失ったと思ったら――すぐそばまで接近されていたあの日のこと。

 

 おそらく実際に起きていたのはこういうことだろう。

 

 まずユイナは〝雷密符(ライミツフ)〟を展開し、自分を()けていた。しかしハクが気づき、ヒミコが振り向こうとすると〝雷惑符(ライワクフ)〟を展開。つまり、ヒミコが話していたのは幻像の方だったのだ。その間に本体は〝雷密符〟で身を隠したまま接近する。そして、頃合いを見計らって幻像を消すと同時に姿を現した……そんなとこだろう。なんとも()った手口(トリック)である。

 

 ここで重要なのは――自分(ヒミコ)は気づけなかったにもかかわらず――ハクがいとも容易(たやす)くユイナの接近を察したことだ。

 

 思い返せばハクはルリカを指しこう評している。

 

〝アオのヒト〟

 

 一方でユイナはこうだ。

 

〝キイロのヒト〟

 

 おそらく自分(ヒミコ)なら〝ヒイロのヒト〟になるのだろう。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 霊気。

 

 緋ノ巫女は平時でもごく(わず)かに体表からソレを放出している。

 

 普通ならまず気づけぬ微量な量であるが――ハクにとっては違うらしい。

 

 だから、あの〝雷密符〟ですら隠し通せぬのだ。

 

(ってぇことは――!)

 

 ……わかっている。

 

 ヒミコとて、わかっている。

 

 これは明らかに論理の飛躍だ。

 

 だがそれでも――()()()()()()、という不思議な確信。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()

 

 だからああして幻像の〈アマテラス〉には目もくれず、執拗(しつよう)に〈サグメ〉だけを狙い定めているのだ。

 

(……どうする)

 

 とうとう。

 

 後送りにしてきた問題に〝答え〟を出さねばならぬ時がきた。

 

 ヒミコの中の理性は玄人(プロ)としてこう言っている。

 

『どうする、だと? 答えは一つだ。己の任務を果たせ。敵を討て』

 

 一方、ヒミコの感情は声高(こわだか)に叫んでいた。

 

『鬼を殺せ! 鬼を殺せ! 鬼を殺せ! それが死んでいった仲間たちへの手向(たむ)けだ!』

 

 理性と感情。

 

 それがすべてだ。すべてのはずなのに――ヒミコの心の中には、まだ〝何か〟がある。

 

 その〝何か〟はヒミコに静かに()げていた。

 

『このままでいいのか? いや、いいはずがない』

 

 どうにかしろ、ということか?

 

 でも無理だ。

 

 絶対に、無理だ。

 

 まず、ここからでは距離がありすぎる。

 

 巨神たる〈アマテラス〉の機動力でもまず間に合うまい。

 

 もし〈アマテラス〉で〝縮空(シュックウ)〟が使えれば――いや、やはり駄目だ。

 

 この距離。如何に縮空で連続跳躍しようとも、そう簡単には詰められない。その前に第一射を打たれ時間切れだ。

 

 そもそも〈アマテラス〉での縮空に無理がある。この巨体が通過できるほどの圧縮空間の展開には生身の時以上に繊細な制御感覚(センス)が必要だ。自分がやったところで圧縮を維持できず、最悪、対消滅(ついしょうめつ)級の被害が出るかもしれない。

 

 それに。

 

 どうするのだ?

 

 ユイナの(もと)に駆けつけたところで、できることは何もない。

 

 この間の二の舞だ。

 

 対消滅を利用した敵の砲撃は――本部では〝対消滅砲〟と識別されている――防げない。

 

 事実、そうだった。あの攻撃は〈アマテラス〉の〝(アマ)玉垣(タマガキ)〟すら優に(つら)いてくる。

 

 だから。

 

 やはり、こうだ。結論は、こうだ。

 

 何もできない――。

 

『ねえ』

 

 突然のハクの声。

 

(……あんだよ)

 

『どうしたいの。ヒミコは』

 

 何故だか不機嫌極まりないソレである。

 

(……わかんねえ)

 

 嘘偽りのない本心だ。

 

 それ以外に言いようがない。

 

 ただ――、

 

(このモヤモヤにケリをつけてーとは思ってる)

 

 それもまた事実だった。

 

『そう』短く呟くハク。『なら、そうすれば』やはり不機嫌そうだ。

 

(それができねーからアタシは――)

 

『できないことなんか、ない』

 

 (つか)の間の沈黙。

 

 否――()()

 

この神体(〈アマテラス〉)のチカラは、こんなものじゃないもん』

 

 次の瞬間、()()()姿()()()()()()()

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