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大緋帝國。
母の生まれた土地。
初めて訪れた土地。
期待は――していなかった、と言えば嘘になる。
真っ赤な、嘘に。
何かが変わるんじゃないか、とは思っていた。
何かを変えられるのでは、とさえ思っていた。
結論から先に言おう。
何も変わらなかった。
巫術学校は大緋帝國の本土に七つ設置されている。
ユイナが通っていたのは列島の南端に位置する久城巫術学校だ。
巫術学校。巫女の養成所。女の園――。
言語の壁、人種の違い、文化の差異。どれが原因だったのかはわからない。わかりたいとも思えない。
確かなことは一つだけだ。
もう二度と会うまいと思っていた書面上の父とその家族。
自分は遠く離れた異国の地で、アレの同類と出くわしてしまった。
顔を合わす度に髪の色で、肌の色で蔑まされ、顔を合わさぬ所ではあることないことを吹聴される。
皮肉なことに、事の顛末まで同じだった。
混血児の巫女は往々にして力が劣るというのが定説だが、ごく稀に例外が現れる。
例外。緋ノ巫女の基準で見ても、規格外の化物じみた力の持ち主。
ユイナがまさしくソレだった。
〝暴発〟という形でその事実が明らかになって以来、露骨な嫌がらせはおろか陰口さえパタリと止む。
目を合わせようともしてこない。まるで〝そこには何もいない〟と自分たちに言い聞かせているかのように。
あの時と同じだ。
やっと――無関心がやってきた。
以降は卒業まで穏やかで冷たい日々が続く。
あまり記憶に残ってはいない。
絵ばかりを描いていた気がする。
昔から絵を描くのが好きだった。
自分の心の空白を埋める――いや、むしろその空白の中にポツンと取り残された〝何か〟に形と色を与える。
それがたまらなく好きだった。
子どもの頃はあの男たちが寝静まった隙に家中の屑籠を漁り、どうにか使い物になるモノを探すしかなかった。
たまに使用人に見つかってしまうこともあったが……大抵は憐みの目で見て見ぬふりをしてくれる。
あの頃はクシャクシャになった紙の余白に、使い古しの潰れた硬筆先で咲かせる幻想の花だけが、唯一の心の慰めだった。




