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幻葬鬼譚 ~神話ヲ殺ス少女タチ~  作者: K. Soma
第九話 幻想の花/背負った命

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112/226

04

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

(現在)

 (トウ)ノ月、(ケイ)ノ週、(ユウ)ノ日 午後

 /結界封印都市ヒモロギ

  ツクヨミ 対鬼戦闘司令本部

  医療棟 屋上

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 

「で……?」ヒミコはユイナと医療棟の屋上に出ていた。「()()がそうだってのかよ」

 

 ()()

 

 ここから見て西側に位置する。三日前の戦いが繰り広げられた第七結界柱方面だ。

 

 そう、第七結界柱――()()()()()()()()()

 

 代わりに湾曲した光の(くだ)のようなモノが多数出現し、(マガ)()(オニ)を押さえ込んでいた。

 

「まるで(おり)みてーだな……」

 

「本部では〝局所封鎖結界〟って呼んでるみたい」

 

「ふぅん……なんにせよ、豪勢な話だな。そのために()()()()()()()()()()()()()()ってんだからよ」

 

 ユイナからはそう聞いている。

 

 なんでもシマメが急遽発案し、ミヅキがそれを許可したのだとか。

 

「そんで? いつまで持つんだよアレ。あのままずっと、ってぇワケにもいかねーんだろ」

 

「ええ。今日の夜までが限界みたい」

 

「ってことは三日しか持たねーってことか……結界柱を一つ潰して。随分と高くつくな」

 

 きっとそれだけ切羽(せっぱ)の詰まった状況だったのだろう。

 

 他人事(ひとごと)ではない。

 

 すべては――自分が負けたせいだ。

 

「畜生が……っ」

 

 鬼への仇討(あだうち)とは別に、ヒミコの内でもう一つの動機(モティヴェイション)が立ち上がる。

 

 仕事の失敗は仕事でしか取り返せない。

 

「………。………………。………………………。」

 

「あん?」

 

 とその時。

 

 ユイナがじぃ~っと自分を見ていたことに気づく。

 

「……なんだよ」

 

 戦闘とは別の種の警戒を迫られるヒミコ。

 

 そういえば、そうだった。さっき目覚めたばかりですっかり失念していたが〝ガチ百合(コッチ)〟の問題は何一つとして解決していないのだった。

 

 しかし。

 

「ん……?」

 

 何か――妙である。

 

 ユイナの様子。この間のようなギラついた感じはなく、何をしてくるかわからぬ不穏さもない。

 

 どころか変に落ち着いている(ふう)ですらある。

 

「ねえヒミコ」ユイナの金色の髪が風に揺れた。「あなたはなんで、戦うの……?」

 

 ……前にもルリカから同じことを訊かれている。

 

 ヒミコの心はあれからまったく変わっていない。

 

 なので必然、同じ答えを繰り返すことになる。

 

「……アイツらを殺すことだけが、今のアタシの生きる意味だからだ」

 

「そう……そう、なんだ」

 

 ユイナはそれ以上の説明を求めない。

 

 むしろ何か納得がいったように頷くと、ふと空を見上げた。

 

 三日前と同じ、分厚く重たい曇天(どんてん)である。

 

「……この分じゃ今日も降ってきそうね」

 

「ん、雨のことか?」ヒミコもつられて空を見遣る。「まあ、そうだな」

 

「あれからずっと雨続きなの。もう夏もおしまいね……」

 

「そりゃ……明日からは(カン)ノ月だしな」

 

 (カン)ノ月。大緋帝國の(こよみ)の上では秋の始まりに位置する月だ。

 

 梅雨ほどでないが多少長く雨が続いた後、木々が紅葉に染まる時期である。

 

 だが――ユイナが話しているのは()()()()()()()()()

 

 何故だかヒミコにはそう思えてならなかった。

 

「なあ、お前――」その理由を問おうとするものの、

 

「あ、そうだわ」ユイナにやんわりと(さえぎ)られる。「ヒミコ。ミヅキさんのところに行ってきて。作戦会議室にいるから」

 

「はぁ?」

 

「次の作戦の説明よ。あなたにとっては大事なことだわ」

 

「……お前は行かねえのかよ」

 

「うん、わたしはいいのよ。さっき聞いてきたばかりだし。それに、」

 

 ()()()()()()()――言ってユイナは微笑(ほほえ)む。

 

 湿(しめ)()()びた涼風(すずかぜ)が、夏と秋の境目(さかいめ)彷徨(さまよ)っていた。

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