03
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(三日前)
闘ノ月、恵ノ週、健ノ日 夕方
/結界封印都市ヒモロギ
ツクヨミ 対鬼戦闘司令本部 中央管制室
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「何が起きたんだ⁉」
「〈アマテラス〉の回収急いで!」
「操者は無事か⁉」
「駄目です、通信繋がりません!」
中央管制室を混沌が支配していた。
無理もない。
〈アマテラス〉が――これまで幾度となく鬼を屠りツクヨミを勝利へと導いてきた〈アマテラス〉が。
墜とされた。
装甲と一体化した巫女装束の大部分が消し飛び、残る僅かな箇所も漏れなく焼け焦げている。
機械の素肌が、肉が、骨格が所々で剥き出しとなり、夥しい出血が周囲を緋色の海に変えていた。
――まさに、瞬く間もない出来事。
白光の矢が〝石環〟を貫いた途端、〈アマテラス〉目掛けて凄まじい破壊の奔流が放たれたのだ。
「あれは」ミヅキが喉を鳴らしシマメを見遣る。「〝対消滅〟を利用した攻撃……⁉」
「ああ、間違いない」シマメは顔面蒼白で頷いた。「あの石環で対消滅を起こし、その上でなお――どうやっているかはまるでわからんが――生じた力を収束させ指向性を持たせている」
「あり得ないわ……〈アマテラス〉の〝天ツ玉垣〟すら破ってくるなんて」
「……それだけとてつもない威力ということだろう。この世の理を捻じ曲げるほどにな」
「……ねえシマメ。正直に答えて」ミヅキが声を落とし訊く。「私たちに、もう打つ手はない?」
ミヅキは残酷な事実を理解していた。
既に〈アマテラス〉の回収は指示している。
だが如何せんあの巨体だ。すぐに済むとは思えない。
ユイナが取り乱しつつ〈サグメ〉で協力してはくれているものの――それよりも早く、敵の第二射が来るだろう。
そうなれば、今度こそ終わりだ。
現状、ヒミコの安否すら確かめられぬが、少なくとも意識はないはずである。その状態で再び〝天ツ玉垣〟が発動するとは思えない。いや、仮に発動したとしても、また破られて同程度かはたまたそれ以上の損害を受けるだろう。
だからやはり――〝詰み〟だ。
この状況は詰んでいる。
ミヅキにはそれ以外の答えを見出せなかった。
だがシマメは、
「……一つだけ、方法がある」
言葉少なにそう答えた。
ただし――不安で不安で堪らない――そんな翳った表情をしながら。




