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幻葬鬼譚 ~神話ヲ殺ス少女タチ~  作者: K. Soma
第八話 触れた指先

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105/226

09

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 同日 同刻

 /結界封印都市ヒモロギ

  ツクヨミ 対鬼戦闘司令本部 中央管制室

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

 

「まさかこうも早く戻ってくるとはね……」松葉杖をついたままのミヅキが不機嫌そうに吐き捨てた。「昨日の今日で一日しか()ってないじゃない」

 

「それに時間も早いしな……」シマメがチラリと時計を見遣った。「まだ夕方だ」

 

「予測では昨日と同じく(マガ)()(オニ)が一体だけ、か……。もしかしたら小型鬼や大型鬼は夜じゃないと具象化できないのかもね……」

 

「あり得る話だ」

 

「……ねえ、シマメ」ミヅキがふと声を落とし訊く。「()()()の様子はどうだったかしら……?」

 

 負傷中の自分に代わり今日もシマメがハヅキの(もと)へ報告に行っていた(何せあの長い螺旋(らせん)階段を松葉杖では(こく)である)。

 

 シマメ(いわ)く、その去り際に〝お()げ〟が(くだ)ったらしい。

 

「いや、いつもとさほど変わらんよ」シマメは顔色一つ変えずに答えた。「ただ私の報告を聞いて終わりさ」

 

「それだけ……⁉」ミヅキが紫色の目を見開く。「敵の動向があからさまに変わってきていることについては? 何も言ってきてこなかったの?」

 

「……ああ、残念ながら〝月読(ツクヨミ)ノ巫女〟さまにもお心当たりはないようだな」

 

「そう……なんだかわからないことだらけだわ……この間の機械仕掛けの鬼の時から……」

 

「おいおい――」不意にシマメが混ぜっ返すような声色(こわいろ)を作る。「そんなこと言ったら最初から何もかもわからないこと()くめじゃないか。何故、黄泉比良坂(ヨモツヒラサカ)が現れたのかも、そこから鬼が出てくるようになったかも……ましてや〈アマテラス〉とは何なのかさえもな」

 

「そう、ね……」

 

 霊式駆動人形〈アマテラス〉。

 

 黄泉比良坂(ヨモツヒラサカ)が前触れもなく出現した当初、そのほとりを調査していた最中(さなか)に発見されたモノだ。

 

 当時の技術では――否、あれから三年の月日と研鑽(けんさん)を重ねた今の技術水準(レヴェル)でさえ、その正体を推し(はか)ることすらできない。

 

 わかっていることはただ一つ。

 

『あれなるは〝(ツキ)(カミ)〟が創り(たもう)うた唯一無二の作品……鬼を討つ機械仕掛けの巫女です』

 

〝月読ノ巫女〟ハヅキがそう断じたことくらいだ。

 

「し、司令!」スズの緊迫した声でミヅキはふと我に返った。「第七結界柱で爆発的な魄子(ハクシ)連鎖反応です!」

 

「なんですって⁉」

 

「解析官の予測より遥かに早いです! 禍ツ忌ノ鬼、具象化しま――」

 

 スズの報告を最後まで聞かずとも十分だった。

 

 前面の巨大描影装置(モニタ)

 

 そこに早送りが如く具象化する鬼の姿が映し出されている。

 

 そう――()()姿()

 

 ()()()()()

 

 魄子測定器の数字は明らかにアレが禍ツ忌ノ鬼と()げている。

 

 固有霊波数分布が昨日(さくじつ)の鬼とまったく同じ値を示していた。

 

 それなのに。

 

()()()……()?」

 

 姿形がまったく異なる。

 

 描影装置(モニタ)に映し出されていたのは最早(もはや)人型の鬼ではない。

 

 端的に言えば()()

 

 数学的に最も単純かつ美しい記述(ディスクリプション)――〝(キュウ)〟であった。

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