公爵家の事情
「そういえば義母様と義父様のお姿が見えませんが」
「あぁ、2人は別宅に住んでいるから。『新婚生活の邪魔をするつもりはないから』だそうだよ」
「私、公爵家のしきたりとかを覚えないといけないんですが」
「しきたりなんて大層な物は無いよ、普通に過ごしてもらえれば大丈夫だから」
リリック様はそう言って笑ってくれた。
朝食を終えて自室に戻って来た私は改めて部屋を見渡した。
実家の部屋とは比べようもないくらい広い部屋、そして豪華なベッドやキラキラした装飾品。
「落ち着かないわね……」
「奥様はこういう装飾品は苦手でございますか?」
「そうですね……、実家とは正反対なので戸惑っていますね」
「それでしたら旦那様に申し上げて内装を変えてもらえばよろしいのでは無いでしょうか?」
「良いの? せっかく私の為に用意してくれた部屋なのに」
「よろしいんです、そもそもこの部屋はリリック様のお姉様が使用していた部屋なので」
「えっ!? 旦那様にお姉様がいたのっ!?」
私は驚きの声を上げた、なんせ初耳である。
「はい、他国に嫁がれてこの数年は姿を見せていませんがエルシアナ様というリリック様とは2つ離れた方がいらっしゃいます」
「他国にいらっしゃるのね」
「はい、エルシアナ様はかなり行動的な方で大旦那様も『エルシアナは外に出した方が良い』と判断されたそうで……」
どんな方なのか気になるんだけど……。
時間の空いた時にリリック様に聞いてみた。
「あぁ、姉さんの事? 姉さんは本来は公爵を継ぐべき人だと思うよ」
「優秀な方なんですか?」
「そうだね、勉学もそうだけど剣術も相当の腕前でね、多分騎士団に入っていたら初の女性団長になっていたかもしれないね、曲がった事が嫌いで相手が年上であろうと王族であろうと間違っていたら堂々と反論出来る人だよ」
話を聞いても想像がつかない。