リリック視点
「はぁっ!? 明日が結婚式っ!? そんなの聞いてないんだけどっ!?」
僕リリック・クロスフォードはいきなりの両親からの通達に驚きの声をあげた。
「あぁ、急に決まった事だ、お相手はリアーナ・プルトリコ子爵令嬢、人柄に関しては全く問題の無い人物だ」
「ちょっと待って! リアーナ嬢て騎士団長の息子と婚約していたんじゃ……」
「ほら、元王太子が婚約破棄騒動を起こしちゃったじゃない、貴方にはまだ婚約者がいないから被害は出なかったけど他の人達は一緒に婚約破棄をしちゃったから」
「まさか婚約者がいない事が幸いするとは思わなかったがな」
両親からの説明というか皮肉を聞いて僕はうぅと押し黙った。
婚約者を作らなかったのは確かに僕が勉学を優先してきたからなのは言い訳出来ない。
社交の場に出れば出会いはあるだろうし学生の間は勉学に励めば良い、と思っていた。
しかし、幼い頃に婚約を結ぶのが貴族の常識だった。
じゃあ僕はどうしていたか、というと父上の仕事現場について行った。
母上は体調が悪かったので僕の世話は出来ず使用人やメイド達は仕事が忙しく僕の相手をしてくれる時間が無い。
我が家は必要最低限の人手の為、無駄な時間が無かった。
だから父上が城に連れて行ってくれたのだ。
だから同い年の子息と遊んだ記憶が無い。
「で、でも婚約ならともかくいきなり結婚は……」
「こうでもしないと結婚出来ないだろ」
ストレートに心にパンチを喰らった。
あぁ、これは逃げられないんだな、逃げるつもりなんてこれっぽっちも無いけど。
こうして翌日、僕は結婚式場にいた。
初めて見た妻となるリアーナを見て僕はドキッとした。
こんな可愛い女性と婚約破棄するなんて……。
改めて魅了の恐ろしさを痛感した。
そして、その日の夜に僕はまず謝った。
リアーナ嬢は僕の告白を聞いて驚いてはいたけど冷静だった。
そして、色んなことを話した。
リアーナ嬢は頭が良く冷静だった。
一夜を共にして彼女となら一緒に生きていけるんじゃないか、そんな気がした。