新婚初夜は土下座から始まった
新作です、よろしくお願いします。
「申し訳無い! リアーナ嬢!」
ベッドの上で土下座しているのは今日結婚式を挙げて私の旦那様になったリリック・クロスフォード公爵様。
「え、え〜と、旦那様? 何故土下座しているのですか? もしかして私との結婚が不本意だとか?」
「いや、そんな事は断じて無い!」
「もしくは他に気になっている方がいらっしゃるとか?」
「それも違う! 他の貴族と違って愛人を作るつもりはこれっぽっちも無い!」
それはちょっと安心しました、最近は新婚初夜に『愛する事は無い!』と宣言する不誠実な殿方がいらっしゃる、と聞いてますから、主にこの国の王太子とか。
「それでは何故土下座しているのでしょうか?」
「……実は結婚する事を知ったのは昨日の事だったんだ」
……はい?
いや、私も結婚が決まったのは1か月前ですし余りにも急速に事が進んで戸惑ってはいましたけど。
まぁ私の場合は事情が事情だったから、というのもありますが。
私リアーナ・プルトリコはしがない子爵家の生まれです。
特にコレと言った目立った事は無く平々凡々な貴族令嬢として過ごして参りました。
唯一波乱があったとしたら貴族学院卒業後に結婚する筈だった婚約者に浮気をされ破棄になった事でしょう。
アレですよ、何処ぞの恋愛小説を鵜呑みにして王太子が婚約していた公爵令嬢に公の場で婚約破棄を一方的に宣告して大騒ぎになったんです。
その王太子の取り巻きの中に私の婚約者がいたんですが結果はおわかりになると思います。
なんせ王命で婚約したんですからね、王太子様であっても王命に逆らう事は国を裏切る事と同然。
元凶の王太子様、そしてその浮気相手である男爵令嬢はこの世から儚くなってしまいました。
そして私の元婚約者もお家から絶縁、追放されました。
良い人だったんですけどねぇ、恋愛って深みにハマると怖いですね。
そして、私は宙ぶらりんになった訳ですがそこに降って湧いたのがリリック様との結婚話。
本日、結婚式を挙げ現在に至る、という訳です。
でも、前日まで結婚する事を知らなかった、てそんな事ありますか?
いや、顔合わせとかもしなかったからちょっとおかしいな、とは思ってはいたんですよ。
でもリリック様はお城の文官として働いていて将来の宰相と呼ばれている方。
そんな方と私が結婚する、なんて信じられなかったんですが……。
これはお互い膝をついてお話する必要があるみたいですね。