西宮やよいのお弁当
俺の隣の席の西宮やよいは、一人暮らしをしている高校生。
お昼はいつも手作り弁当で、本当に高校生かと疑ってしまう。
「いただきます」
今日もその声とともに、開けられる弁当箱の蓋。
横目でチラチラと不審者並みに、見てしまう俺は、コンビニで買ったタマゴサンドを食べている。
見た感じを伝えるとしたら、鶏そぼろだろうか。ご飯とともに口に運ばれていく。
それに野菜の肉巻き。ハッシュドポテトにチンジャオロースまで。
別の容器にはコールスローが入っている。
おいおい。彩りは申し分ないし、バランス良さげだし、高校生が手作りする弁当のクオリティじゃないぞ。
俺のサンドウィッチを食べる手が止まる。
「西宮の弁当、相変わらず凄いな」
そんな独り言を呟いている日々。
タマゴサンドだけじゃ物足りなくて、カツサンドを食べ始める俺。
「今日も東川は、サンドイッチなんだね」
「ん? バレてる?」
「バレるも何も、見てればわかるよ」
手作り弁当の西宮に見られているとは、中々どうして、こんなにも恥ずかしくなるのか。
「西宮の弁当は、相変わらず凄いと思う」
「そうかな。簡単なものしか作ってないよ」
「なんかマウントとられた気分」
ムスっとしながらカツサンドを頬張る。
カラシマヨネーズが良いアクセントになっていて、油断すると辛さにやられてしまう。
「一人暮らし、どうよ?」
「楽しいよ。色々値上がってるから、大変だけどね」
「弁当作り大変じゃない?」
「作りおきするからね。将来的にも良い経験かな」
満面の笑顔で、そんな前向きなことを言わないでくれ。
西宮の将来は絶対、幸せなものになるだろうな。