第9話 初配信のお時間です
「さて!! アタシの仕事と言えば配信!! 配信といえばダンジョン!! ということで来ました新宿ダンジョン!!」
「れなは最初から飛ばすなぁ」
「手っ取り早くていいでしょ? こーいうのは実践で覚えた方がいいんだって!!」
「体育会系の考え、とも言う」
それは確かにそう。
事務所の契約書にサインやら何やらを終えた後、俺達三人はれなの発案でダンジョンにやってきた。
場所は新宿ダンジョン、俺がスキルを試した場所だ。
「そういえば二人はどんな戦い方をするんだ?」
「えっとねー、アタシは遠距離魔法がメインかな。潜在スキルも遠距離に特化してるし」
「ふむふむ」
自らの潜在スキルを説明しながら、れなは自らのスキルカードを取り出しスキルの詳細を見せてくれた。
【狙撃手】
約1000m以上離れたモノを視認し、音も感じ取れる。
また攻撃相手との距離が離れていれば離れている程、ダメージが増加する。
推定ランクA
「遠く離れていればいるほど強力になるのか。敵に回したくない潜在スキルだな……」
「そうだねー!! 覗きにぴったりな潜在スキルだと思う!!」
「もっと別の使い方があるだろ」
「男子なら興味あるんじゃないの?」
「ないとは言わんが……それはそれだ」
俺が持ってたとしてもせいぜいチラ見しかせん。
「ふーん……♡」
って近い近い。
そんな「やっぱり男子ってー」みたいな、からかうような目で見ないでください。
「姉さんの潜在スキルは強力。だから見えない敵を倒しすぎて、撮れ高がなくなりかける時もある」
「あ、あはは……そんな時もあったねー」
「あー……映像には不向きそうだよなぁ」
見えない敵を打ち抜きまくり、誰とも会わずに素材をひたすら回収し続ける配信、というのはシュールだ……
「まあでも便利だよ? 狙いを定めてー……ばぁん♡」
「うおっ!?」
れなが指で銃のポーズを取ると、指先から赤色の光線を高速で放ち、俺の目先を通り過ぎた。
すると、
「ギャビッ!?」
「ね?」
「お、お見事……」
断末魔が聞こえた方向をよーく見ると、鳥型のモンスターが何かに貫かれた跡と共に地面に倒れていた。
まさか今の一瞬で敵を視認し、魔法を命中させたのか?
凄まじい反応速度と精度……遠くに逃げる事が仇となり、一方的に見えないところから撃ち抜かれそうだ。
彼女の実力に関心しつつ、俺は真白の方へ向いて彼女のスキルについて聞き始めた。
「ま、真白は?」
「真白は回復」
「回復? 滅茶苦茶いいじゃん」
「いえい」
回復魔法というのは初心者は勿論、上位パーティーでも重宝される。
だから回復魔法の使える医者は医療費がやや高額だけど、治りが早くて需要が絶えないのだとか。
れなと同じく、真白もスキルカードを取り出し、スキル詳細を俺に見せてくれた。
【自動回復】
自分と周囲にいる味方を少しずつ回復させる。
魔力は消費しない
推定ランクA
「無限に回復できるじゃん」
「そう。だから真白達は一日で退院できた」
「自動回復のおかげだったのか。どうりで早いと思ったよ」
「ふふん」
ふんす、と羽をパタパタさせながら自慢げな顔を浮かべる真白。かわいいな。
魔力消費無しで回復し続けられるのは長期戦にもってこいだ。
大量のモンスターと戦わないといけない時とか、万が一ダンジョンに閉じ込められた時とか。
そういえば真白の近くにいると妙に活力が湧くような気がする。自動回復の効果なのだろうか?
いずれにせよ、便利な潜在スキルであることには間違いない。
「おまけに盾も使える。これでガードもバッチリ」
「こんなに大きい盾を? タンクもこなせるのは強いな」
「本職ではないけど。多少は扱える程度」
そうは言いつつ真白より大きく重そうな盾を彼女はブンブン振り回している。
亜人は普通の人より力が強いとは言われているが、それを生かした戦法だろう。
「基本的にはアタシが敵を打ち抜きながら真白ちゃんがサポートしてくれるって感じかな!!」
「Bランク程度なら苦手な近接でも、亜人特有の身体能力でなんとかなる」
と、2人の実力と戦闘スタイルはだいたいわかった。
うーん強い。
2人ともAランクの潜在スキルを持っているし、立ち位置のバランスも良い。
れなの高火力スナイパーで撃ち抜きながら、真白のサポートでカバーを行う。
攻守共に隙がない編成だと思う。
あれ? じゃあ俺の役割は?
「俺は何を……近~中距離のメイン火力とか?」
「正解!!」
「真白達では複数の敵に迫られた時、少々手こずる。だから前線がいてくれると非常にありがたい」
「なるほど……つまりやることは前と変わらないってことか」
ソロ時代と同じく、前の敵をハッタリなんかで上手い事倒し続ける。
ヘイトを俺が買う事で、れなの長距離狙撃や真白のサポートも無駄なく行えるはずだ。
最近、広範囲の攻撃技も手に入れたし、魔法の組み合わせで新しい攻撃戦術も期待できるだろう。
「さて!! 早速配信しよう!! ポチッとな」
「え!? もう!?」
「大丈夫大丈夫!! バッと話してぐわーっと倒せばいいから!!」
「説明が抽象的すぎだろ……」
「姉さんは勢いに任せすぎ。最初は挨拶をして、今日の軽い目標を語ればいい」
「おけ。ありがとう真白」
ざっくりとはしていたがやる事は分かった。
上手くやれるだろうか……
不安で包まれる中、れながドローン型カメラの前に立ち、元気よくあいさつを始めた。
「やほーい!! オトプロ所属のれなだよー!!」
「やほーい。オトプロ所属の真白だよ。そして」
バッと指を刺されたと同時にドローン型カメラが俺の方を映し出す。
「や、やほーい……本日オトプロに所属した無名でーす……」
やほーいって毎回やんないとダメ?
こんなんで大丈夫かなぁ……と思っているとドローンがコメントを空間上に表示し始めた。
コメント欄
・うおおおおおおおお!!
・新人だああああああ!!
・こいつ前にSランク倒してたヤツじゃね!?
・やべぇやべぇ!!
あれ?
意外と好評みたいですね。
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