第89話 力とは
「”跳剣”!! ”複製”!!」
無数の跳ねる剣が父さんを襲う。
無数の武器には無数の魔法、という安直な考えだが果たして。
「”神秘の盾”」
神々しい盾が……大量に!?
あの輝きから察するに”竜影剣”並の力は秘めていると思うが、それを増やすとは。
まさか父さんの潜在スキルは、どんな武器でもいくつも増やしてしまうんじゃ……
「防ぐだけじゃない。反射もする」
「っ!! ふさげた攻撃を!!」
”神秘の盾”に当たった”跳剣”がはね返り、俺の方へと襲いかかる。
魔法なら何でもはね返す盾って事か。
しかも、俺の方へ跳ね返るよう、微妙にずらしてやがる!!
遠距離魔法は効かないと察し、すかさず”跳剣”をほぼ全て解除して近接戦闘に移行した
が、無数の”神秘の盾”はまだ残っている。
やはりSSランク武器は伊達じゃない事を俺は嫌でも思い知る事になった。
「”模倣”しろ」
「は!?」
”神秘の盾”から先程俺が撃った”跳剣”が発射される。
まさか受けた魔法をそのまま再現出来るのか!?
いくらなんでもぶっ壊れすぎだろ!!
「”双演乱舞”!! ”神速”!!」
凄まじい加速力と共に二本の剣が”跳剣”を斬り裂いていく。
下手に魔法を撃てない以上、防御手段も近接に頼らないといけない。
それでも”神秘の盾”から”跳剣”は射出され続ける。
「無限って事かよ!!」
苦し紛れに近くにあった”神秘の盾”を蹴り飛ばした。
すると、
「え?」
盾が消えた……?
魔力も込めていない、ただの蹴りで”神秘の盾”が砕け散って消滅した。
(まさか、物理耐性が低い?)
”武器生成”の弱点が見えた。
チートすぎるだろ、と軽く絶望していたけど希望はある!!
俺は攻撃を防ぎつつ、隙を見て無数の”神秘の盾”に物理攻撃を加えて、次々とぶっ壊していった。
「弱点に気づいたか……だが」
カチャッ、と父さんの手元に出現したのは
「壊されてもまた作ればいい」
いくつも砲門があるガトリング。
おいおい、武器っていうか兵器じゃん。
そんなのもありかよ。
「掃射」
バラララララララララッ!!
無数の弾が俺に襲いかかる。
”神秘の盾”はまだ残ってる。
”跳剣”もある。
で、追加のガトリング。
これは……相当キツイかもなぁ。
「逃げるっ!!」
”神速”で上空を飛び回り、ガトリングの掃射を回避。
弾数は多くても、発射方向が真っ直ぐで助か……
「はぁ!? 追っかけてくるのかよ!?」
なんとガトリング弾は軌道を修正し、俺を目掛けて追いかけ始めたのだ。
追尾性能もあるとか、盛りすぎだろ。
これじゃあ、体力勝負じゃねえか!!
「ぐあああああああああっ!!」
”双演乱舞”である程度ははね返したものの、半分くらいの弾幕が俺の身体に襲い掛かった。
弾が当たれば動きがにぶる。
”神速”も”双演乱舞”もキレがなくなる。
その隙を父さんは見逃さない。
「発射」
一発のロケットランチャーの弾が直撃し、空中で爆発を起こした。
「終わったな……」
身体が勢いよく空中から地面に叩きつけられる。
ピクリとも動けない。
自分の邪魔するものはどんな手を使っても排除する。
例え命を犠牲にしても。
それが俺の父親だ。
「無名よ、お前は運が悪かった。それだけだ」
ゆっくりこちらへ歩み寄り、俺の頭を踏みつけながら冷たい言葉をかける。
完全に勝った気でいやがる。
動けない俺の姿を見て、父さんは心の底から安心してるだろう。
「……動け」
その隙を待っていたとも知らずに
「っ!? ぐっ……!!」
「一番油断する瞬間だよな……ははっ」
突如、父さんの腹部を二つの”跳剣”が斬り裂いた。
無数の武器を持つ相手には油断させるのが一番いい。
俺が自分の”跳剣”を解除した際、実はいくつか残していた。
元々奇襲用だったが、”神秘の盾”が複製してくれたおかげでうまく隠せたよ。
そして、全力で叩きのめした後という武装解除にはうってつけのタイミング。
俺はその瞬間を狙って仕掛けたというわけだ。
「今更あがいた所で……!!」
「ぐっ!?」
ドカァアアアアアアン!!
再びロケランが直撃し、俺の身体を吹き飛ばす。
「あぁ……いってぇ」
「諦めろ、お前一人では何も出来ない。ここが限界だ」
限界ねぇ……
そんなの俺だって分かってますよ。
俺の無属性はチートだ。
ぶっ壊れだ。
だけど、対人戦では無力な事が多くて、パワーでゴリ押しみたいな手段が取れない。
Sランク以上に効くのも、あくまでヤツらに耐性がないだけ。
でもなぁ、
「無理を承知でやんないとダメな時もあるだろ……?」
ぐぐぐっとふらつく足で立ち上がる。
お前らの罪は重い。
れなと真白の家族を奪って、
セリアの自由を無くして、
朝日の心を苦しめて、
俺の家族がどれ程苦しめられたと思ってる?
これ以上、一方的に奪われ続ける姿を見るのはゴメンなんだよ……!!
「がっ……」
「くだらん」
その覚悟をへし折るように、槍が俺の腹部を貫いた。
「……」
意識が遠のく。
やらないといけない事が多いのに。
ここで倒れたらいけないのに。
身体が言う事を聞かない。
立てと頭で命令しても、指一つ動かす事すら出来ない。
ここで終わるのか?
(ちくしょう……)
もう一度、いや一度で十分だ。
あのクソ親父をぶっ飛ばして、全てを終わらせたい。
消えゆく意識の中でも、それだけは強く残り続けた。
「”ゴッドヒール”」
「”エリクサー”よ、ほら」
身体が……軽くなった?
「真白……セリア……」
「もぉ、一人で無茶しすぎよ。作戦を立てた時から切羽詰まってるとは思ってたけど」
「パパはいつもそう。真白達に頼る事も覚えた方がいい」
貫かれた腹部が治っている。
全身の傷や疲れもない。
これが真白の回復とセリアのアイテムの力か……
「”フラッシュガトリングショット”!!」
「閃光弾か、この程度なら」
「甘いっすねぇ……”ダークアイ”」
「っ!?」
閃光弾と暗闇が父さんの視界を奪う。
”神秘の盾”に当たる直前にフラッシュを発動させ、父さんに”遮音”で近づいて暗闇で視界を奪う。
見事な連携だ。
「ふっふーん♪ ダーリンにはアタシ達がいるんだから大丈夫だよ」
「そうっすよ。あーしらだってお荷物でここに来てる訳じゃないんすから」
あぁ、なんて恵まれてるんだろう。
もう勝てねぇかもなぁと諦めかけてたのに、再び活力が戻ってくる。
「みんな……」
勝利の法則なんて一切ない。
「手を貸してくれるか?」
だけど、なんかやれそうな気がする。
「「「「勿論!!」」」」
さぁ、もう一度だ。
このラストチャンスで、全てを終わらせる!!




